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日産社長辞任へ 負の連鎖断つ組織改革を

 日産自動車の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)が、不当に上乗せされた報酬を受給した問題の責任を取る形で辞任することが決まった。特別背任などの罪に問われたカルロス・ゴーン氏が昨年11月、会長職を解任されたのに続いて、トップが立て続けに不祥事で退陣するという異例の事態である。

 「負の連鎖」を断ち切り、組織の抜本的な立て直しへ向けて仕切り直せるか。改めて正念場となる。

 問題となったのは、株価が事前に決められた水準を超えた場合に差額を受け取れるストック・アプリシエーション権と呼ばれる制度だ。社内調査によると、西川氏が秘書室に報酬の増額を求め、担当役員が権利の行使日をずらしたことで、その間の株価上昇で本来より約4700万円多い報酬を受け取ったという。

 同様の制度は他の企業でも採用している。西川氏は、意図を持った不正とは違うと弁明している。だが、取締役会議長から「違法性はないが、企業統治上の重大な問題だ」と指摘され、辞任要求を受け入れた。

 もともと西川氏に対しては、ゴーン氏と近い関係にありながら、容疑となった不正を止められなかった責任論がくすぶっていた。それに企業業績の低迷が加わり、社内の求心力が低下していたところに今回の報酬問題でとどめを刺された格好となった。

 会社を私物化したとされ、その末に失脚したゴーン氏の後を受けて経営再建を託された立場でありながら、今回の事態を招いてしまった。その認識の甘さは責められても仕方がなく、辞任はやむを得ない選択だったと言えよう。

 同制度を巡っては、西川氏以外の複数の役員にも問題があったとされる。経営陣全体にずさんな体質がまん延していたとすれば見過ごせず、組織の自浄能力が問われる。

 日産は6月、社内の透明性を高めるため「指名委員会等設置会社」に移行した。取締役候補を選ぶ「指名」、役員給与を決める「報酬」、役員の業務執行をチェックする「監査」の3委員会を取締役会に設け、各委員会とも過半数を社外取締役で構成するルールだ。今回はその体制下で調査が行われた。組織としては「外部の目」による監視機能が発揮されたとも言える。

 今後、最大の焦点は後任人事である。日産は、企業連合を組むフランス大手ルノーとの間で出資比率見直しといった難交渉を控えている。社内的には、日本国内の工場を含む世界の14拠点で1万2千人超の人員を削減する大規模な構造改革を進める予定だ。

 内外に難題を抱える局面だけに、トップには業界の事情に精通し、会社を一つにまとめる求心力や交渉力が求められよう。後任は来月末までに決まるという。長引く混乱に終止符を打ち、信頼される組織へ、今度こそ徹底してつくり変えねばならない。

(2019年09月13日 08時00分 更新)

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