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柔道整復術で回復促進 海外の大学からも注目

11日に学内で行われた、素根 輝選手の優勝報告会には、新聞・放送等全国から20社のメディア関係者が訪れた
11日に学内で行われた、素根 輝選手の優勝報告会には、新聞・放送等全国から20社のメディア関係者が訪れた
IPUスポーツ科学センター内の高気圧酸素ルーム。チームで、ミーティングをしながら回復を促進させる
IPUスポーツ科学センター内の高気圧酸素ルーム。チームで、ミーティングをしながら回復を促進させる
IPU附属鍼灸接骨院
IPU附属鍼灸接骨院
併設されているコンディショニングルーム
併設されているコンディショニングルーム
9月28日、環太平洋大学駅前キャンパスにて開催される統合医療学会岡山支部総会・学術講演会では、統合医療に関する様々な情報が得られる
9月28日、環太平洋大学駅前キャンパスにて開催される統合医療学会岡山支部総会・学術講演会では、統合医療に関する様々な情報が得られる
 8月末に行われた2019世界柔道選手権大会では、女子78kg級超の素根輝選手(環太平洋大学1年生)が、執念で優勝を勝ち取り、本学にとっても大きな喜びであった。11日には学内でも報告会が行われ、全国から20社のメディア関係者が訪れた。何より、在学する学生達が喜びを共有し、誇りを感じ、自分たちも頑張ろうと思うようになった、ことが大きい。

 一方、男子66㎏級の王者、阿部一二三選手(日本体育大学3年生)と初出場の丸山城志郎選手(ミキハウス:26歳)の決勝戦は、実力伯仲の僅差であった。何より両選手とも画面を通じて負傷の状況がわかるほど、まさに満身創痍の死闘であった。他にも、試合中に負傷し、医師が応急処置をする様子が見られた。この大会は決勝までに4分間の試合を5試合するのであるから、相当にハードであったことは予想できる。

 試合中のスタミナはもちろんのこと、試合と試合の間、また翌日の試合までの疲労回復は、非常に重要な課題である。疲労回復には、栄養補給、休養はもちろん、運動中や運動直後のケアが重要である。

 この疲労回復については、2008年北京オリンピックでの主要な研究テーマでもあった。2002年サッカーワールドカップでベッカム選手が使用し、2006年には早実野球部の斎藤佑樹投手が、酸素カプセルで疲労回復を促進したことは記憶に新しい。カプセル内での圧力を高めることにより、体内への酸素溶解が進み、疲労回復を促進するというものである。

 すでに、医療現場では高気圧酸素療法が取り入れられ、末梢の血行障害改善、脳梗塞治療などに対する臨床結果が出されてきている。

 スポーツ場面では、アイスパックをつくり、ハーフタイムに首の後ろや主働筋への冷却処置などは一般的である。また、試合後に水温12度程度の冷水と温浴を行う「交代浴」は、全身の血流を促進するとともに自律神経系を調整し、疲労回復を促進することも知られている。足だけの「交代浴」も効果的である。

 一般に、スポーツによる外傷は、整形外科医での診察を受ける。重篤な骨折や関節内の靭帯断裂などの状態にない場合は、痛み止めやシップが処方され、安静を指示される。一方、選手は診察結果に安心するが、復帰をどのように早めるかで頭を悩ます。

 そこで登場するのが「整骨院」や「鍼灸整骨院」である。

 医療の国家資格である柔道整復師や、鍼灸師の資格を併せ持つ柔道整復師が経営する「整骨院」や「鍼灸整骨院」では、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などのけがに対し、手術をしない「非観血的療法」によって、整復・固定などの治療を行うことができる。

 骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷などのけがは、スポーツ選手に多く、近年は、柔道整復師も様々な先進的医療を研究し、スポーツ選手のケガ治療のみならず、疲労回復まで幅広く対応するところが増えた。すでに、NPB日本野球機構では、所属するトレーナーは、保険の関係で医療の国家資格が求められ、柔道整復師の資格を持つトレーナーが多く在籍している。

 今回の世界柔道大会においても、バックヤードにおいて選手のケアを柔道整復師が行っていたという。素根選手の場合も、お兄さんが柔道整復師でもあり、日頃のケアも含め大会に帯同している。一昔前は、柔道整復師といえば、元柔道家が多かったが、最近では柔道以外のスポーツ経験者も増え、そのスポーツ特有のケガに詳しい「整骨院」も増えてきた。

 また、日本古来の柔道整復術は、近年海外からも注目を集めている。落馬による骨折などが多いモンゴルへは、日本柔道整復師会が人材を派遣し、モンゴル国立医科大学に「伝統医療セラピー科」が誕生し、柔道整復術が教授されている。

 今春には、本学にイギリスのティーサイド大学、ベルギーのブリュッセル自由大学から、教師・学生が訪れ、整復学について学び、高価な医療器具がなくとも、丁寧に急性医療に対応できる日本の整復術が称賛された。

 医療やスポーツ科学の世界は日々進歩している。医療やスポーツにも関わる柔道整復師や指導者もよく勉強している。新しい知識を吸収し、専門分野の学会以外にも積極的に学びの機会を作っている。

 9月28日に開催される統合医療学会岡山支部会では、多くの方々に柔道整復術を発信する企画がある。また、10月20日には岡山県柔道整復師会が、中国・四国地区で唯一の先進的設備を備えた本学スポーツ科学センターを視察に訪れる。

 週末にスポーツが開催されることもあり、土曜日も診療を行っているところも多い。スポーツや日頃の不調を感じたら、一度、柔道整復師のいる「整骨院」を訪れ回復促進を試みてはいかがだろう。

 ◇

三浦 孝仁(みうら・こうじ)博士(医学)IPU環太平洋大学・体育学部長・スポーツ科学センター長。岡山大学名誉教授。公益財団法人岡山県スポーツ協会スポーツ医・科学委員会委員。一般財団法人岡山市体育協会理事・スポーツ振興委員会・委員長。NPO HSA JAPAN代表理事。岡山大学在職中に顧問を務めた同大ウェイトトレーニング部は10度の全国制覇を果たし、ハンドボール部は過去最下位から1部上位へ引き上げるなど、長年に渡りスポーツ指導・教育・研究やキャリア教育などに携わった。著書に「大学生のためのキャリアデザイン」(かもがわ出版)、「筋トレっち 走れるカラダの育て方」(東邦出版)など。早稲田大卒、日本体育大大学院 修了。1957年生まれ。

(2019年09月11日 11時05分 更新)

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