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豪雨被災の“買い物弱者”を支援 真備で移動販売続ける成田さん

移動販売で訪れた仮設団地の被災者と会話する成田さん(中央)=8月29日、倉敷市真備町箭田
移動販売で訪れた仮設団地の被災者と会話する成田さん(中央)=8月29日、倉敷市真備町箭田
 西日本豪雨で被害を受けた倉敷市真備町地区の仮設住宅団地などに移動販売車を走らせ、買い物が困難な被災者を支えている男性がいる。岡山県吉備中央町で移動スーパー「ロンドン」を展開する成田賢一さん(40)=同町上野=だ。毎週1回、食料品や日用品など約400点を取りそろえて提供。採算は厳しいというが、「必要とされることが自分の喜び」と活動を続けている。

 8月29日の昼間、倉敷市真備町箭田の仮設団地に販売車が到着した。成田さんは日用雑貨や乾物、総菜などを並べた棚を次々に下ろして陳列。荷台の冷蔵ケースには肉や刺し身もそろえる。

 「店開き」を知らせるメロディーに誘われて住民が集まり、成田さんとの会話を楽しみながら品定め。女性(90)は同居の長男(69)との1週間分の食料を購入し「自分も長男も車を運転できず、近くに商店もない。今は販売車のない生活は考えられない」と話した。

 成田さんはもともと、吉備中央町でカフェレストランを経営。2011年にドイツで料理修業に励み、現地の日本料理店で弁当や総菜の配達も担った。その経験を生かそうと、帰国後の13年、レストラン経営の傍ら移動販売を始めた。

 真備町地区へは、被災地の支援に携わる知人の依頼を受け、昨年10月から毎週木曜日に回っている。当初は被災者の境遇を思うあまり、接し方に悩んだが、常連客から「同じ被災者ではないから話せることもある」と伝えられ、「肩の力を抜いて何でも話してみよう」と考えられるようになったという。

 真備町地区の仮設団地に加えて、真備町内の高齢者施設や総社市内の仮設団地も巡り、1日の走行距離が200キロに及ぶこともあるが、仕入れ値に燃料代をほとんど転嫁せず販売を続けている。

 成田さんは高校2年の時にがんが見つかり、医師から余命宣告を受けたことがある。治療を受けながら「必要としてくれる人のために動きたい」という強い思いが湧き、それが今の自分を突き動かしているという。

 被災地では最近、仮設団地から自宅に戻る人が増え、移動販売のニーズの減少も感じるようになったが、成田さんは「利用がゼロになるまで続けるのが自分の役割。前向きなお別れができれば本望だ」と話している。

(2019年09月10日 22時41分 更新)

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