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「私を感〓させたのは、その頂上…

 「私を感〓(〓は難の隹が欠)(かんたん)させたのは、その頂上のみごとな崩壊ぶりであった」―。作家の深田久弥が名著「日本百名山」にそう記したのは鳥取県の大山だ。頂上付近の稜線(りょうせん)は両側がなだれ落ちている。その壁が夕日に染まる遠景をたたえた▼そうした眺めも今夏の忘れられない思い出となったに違いない。難病の筋ジストロフィーで手足がほぼ動かない同県の19歳の女性が先月末、家にいながら登山を体験した▼分身ロボット「オリヒメ」を代わりに登る人が持ち、搭載したカメラから届く映像を楽しんだ。高さ約21センチのオリヒメは指のわずかな動きで操ることができ、木の揺れに風を感じたと目を輝かせたそうだ▼こうした助けがあれば、どこにいても社会とつながれる。開発した吉藤健太朗さん(31)は小中学生の頃、不登校だったという。孤独を癒やすために考えたロボットは今、体の不自由さを補うのにも役立っている。筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった病の患者らが自宅から目の動きなどで遠隔操作し、給仕して働くカフェを以前、この欄で紹介した▼ALSで声を出すこともできない舩後靖彦参院議員も国会に導入を望んでいる。視線でパソコンに入力した文を代わりに読ませたり、挙手させたりする▼柔軟な発想で後押ししてほしい。同時に、支援が学校や職場で広がるきっかけになるといい。

(2019年08月24日 08時00分 更新)

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