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復興庁の存続 司令塔の真価が問われる

 被災地の現状や積み残された諸課題などからして、当然の判断と言えよう。

 政府は、東日本大震災からの復興の司令塔として設け、2020年度末で設置期限が切れる復興庁を現体制のまま存続させる意向を固めた。与党の提言を踏まえたもので、延長期間や被災地支援策などの検討を進めて年内に基本方針をまとめる考えだ。

 復興庁は、震災翌年の12年に首相の直属機関として発足した。専任の閣僚を置き、復興政策の立案や被災自治体と関係省庁の調整、予算の要求や管理などに当たってきた。

 被災地を国が重点支援する「復興・創生期間」の終了時が設置期限となるのを受け、政府は今年3月、いったんは復興庁に代わる後継組織の設置を明記した。与党内では内閣府の防災担当部門と併せた上で、内閣府の外局とする案や、「復興・防災庁」創設などが取り沙汰されていた。

 だが、組織の格下げや、防災事業が復興より優先されるのではないかといった被災地の懸念の声に配慮し、一転して現行体制での存続を決めたという。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から8年余りになる。だが、今も福島、宮城、岩手の被災3県で約5万人が避難生活を余儀なくされている。福島第1原発の廃炉には40年以上に及ぶ長い歳月を要する。

 福島県では除染や避難者の帰還促進など、これからが復興の正念場となる。宮城、岩手両県でもインフラ復旧のめどは立ちつつあるが、被災者支援や産業振興など抱える課題は多い。復興は道半ばであり、引き続き国の後押しが必要だ。

 とはいえ、復興庁の現状を見る限り、単に現体制を引き継ぐだけではこれから先の重要な役割を担っていくには心もとない。

 期待されていた縦割り行政を排して復興の計画から実施までを担うという役目は、省庁間の調整などにとどまった。政府内で復興相が他の省庁などにリーダーシップを取れているかどうかも疑問だ。職員は各省庁からの出向が多く、数年で交代するためノウハウの蓄積が十分とはいかない。復興相の失言などによる交代も相次いだ。

 これでは組織が有効に機能してきたとは言い難い。これまでの取り組みをしっかり検証し、役割を発揮できるよう改善に努めてほしい。

 東北の被災地には、月日の経過に伴って支援から見離されていくのではないかという不安感がある。復興庁は支援の前面に立つという強いメッセージを出してほしい。

 今後はより具体的な支援策を講じ、被災地の多様なニーズを踏まえた実効性ある取り組みが待たれる。財源の確保問題も大きな課題である。基本方針に、被災者に寄り添い信頼されるような司令塔像を盛り込めるか。安倍政権の姿勢も問われよう。

(2019年08月23日 08時00分 更新)

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