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ビアガーデンで地酒の魅力PR! 「0杯から1杯」うれしい手応え

「冷やがおいしい備中の地酒バー」で提供した日本酒。夏向けの生酒をはじめ、岡山が誇る酒米「雄町」や「朝日」などで醸した個性豊かな酒をそろえた
「冷やがおいしい備中の地酒バー」で提供した日本酒。夏向けの生酒をはじめ、岡山が誇る酒米「雄町」や「朝日」などで醸した個性豊かな酒をそろえた
 「ビアガーデンで日本酒!?」。会場でそう感じた人は、少なくなかったかもしれない。

 8月初旬、倉敷市内のビアガーデンからのお声掛けを受け、会場の一角に日本酒バーを出店した。「冷やがおいしい備中の地酒バー」と銘打ち、備中の地酒8種類をセレクト。客にはこのうち3種類を選んでもらい、ワンコイン500円で楽しんでもらった。酒は冷やして提供するだけでなく、希望に応じてロックや炭酸割りにも対応。酒のチョイスに迷った人には好みに合う酒を提案するなど、客とのコミュニケーションも大切にした。

 この日の倉敷市内は、真夏の太陽がギラギラと照り付ける晴天。うだる暑さは日没まで続き、日本酒にとってはまさに“アウェー”なビール日和だった。それでも日没を迎え、心地よい風が吹き始めた頃から、一人、また一人とバーに“来店”。普段あまり日本酒を飲まない人や日本酒からしばらく遠ざかっていた人も顔を見せてくれるなど、うれしい手応えがあった。

 意外だったのが、ロックや炭酸割りを希望する客がほとんどいなかったことだ。50ml×3杯と少量ずつの提供だったこともあり、酒そのものの味わいを試してみたかったのだろう。「ビールに対抗するには日本酒にも喉越しがあった方がいいだろう」とか、「ロックや炭酸水割りで少しでも日本酒を飲みやすく」などという考えは、提供側の自己満足にすぎなかったようだ。客からも「久しぶりに日本酒を飲んだが、イメージしていた以上においしい」といった感想や「地酒の味わいにも個性があるのですね」という驚きの声が。「せっかくだから全種類味わってみたい」と飲み比べをリピートしてくれた人まで現れたのは、うれしい誤算だった。

 街中で開催される大きな日本酒イベントと比べると、来客数も提供量も決して多くはない。しかし、客とのコミュニケーション量と魅力を伝える熱量だけは劣っていないと、胸を張りたい。もっと多くの人と出会い、対話を通して、この小さな芽をじっくりと育てていけたらと心から思う。日本酒を0杯から1杯へといざなう活動は、継続こそが近道だと信じている。

 実をいうと、出店当日までは「ビアガーデンで日本酒を飲んでくれる人いるは本当にいるだろうか」と不安でいっぱいだった。そこでSNSで告知をしたところ、日本酒でつながった友人や日本酒講座の生徒たちが駆け付けてくれて、とても心強かった。中には備中地域の酒蔵の蔵元兼自ら酒造りを手がける杜氏(とうじ)の姿もあったので、備中の地酒を紹介する場面ではすかさずマイクを託し、来場者に直接PRしてもらうこともできた。備中の地酒の魅力や酒造りへの思い、少しは皆に届いていたらうれしい。

 日本酒の素晴らしさや魅力を知らない人は、まだまだいる。いつもの環境とは異なる場所に出ていくことで、その輪はもっと広がるはずだ。さて、次回はいつ、どこへ出没しようか。かつての自分が経験したような日本酒との出合いを一人でも多くの人に味わってもらうことが、私のささやかなモチベーションになっている。

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 市田真紀(いちだ・まき) 広島市出身の日本酒ライター。最近の主な活動は、日本酒業界誌『酒蔵萬流』の取材執筆や山陽新聞カルチャープラザ「知る、嗜む 日本酒の魅力」講師など。このほか講演やイベントの企画・運営を通して、日本酒や酒米「雄町」の認知拡大を図っている。夏は田んぼ、冬季は蔵が取材フィールド。たまに酒造り(体験・手伝い)。SSI認定きき酒師、同日本酒学講師。J.S.A SAKE DIPLOMA取得。1970年生まれ。

(2019年08月22日 12時30分 更新)

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