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戦没者遺骨収集 ずさんさ排し遺族の元へ

 第2次大戦による日本の海外戦没者は沖縄や東京・硫黄島を含め240万人で、うち112万柱は戦後74年が過ぎても遺骨が帰っていない。厚生労働省によると、フィリピンに36万9千、ノモンハンを含む中国東北部に20万6千、サイパンなど中部太平洋に17万3千柱が残されている。

 遺骨収集を「国の責務」と定めた戦没者遺骨収集推進法も2016年に成立した。政府の収集事業に期待して帰還を待つ遺族は少なくない。だが、それを裏切る失態が相次いでいる。

 先月末に分かったのは、戦後に旧ソ連に抑留され、シベリア地域で死亡した日本人の遺骨として、同省の派遣団が5年前に持ち帰った16人分全てが日本人でない可能性が高いということだった。

 鑑定結果は昨年8月に出たのに公表もしていなかった。同省は「結果の精査や整理に時間がかかった」というが、怠慢との批判は免れまい。

 埋葬地を誤った可能性があるという。経緯を検証し再発を防ぐべきだ。他にも取り違えはないのかという懸念も拭えない。ロシア側とも遺骨の返還などに向けて協議を急ぐ必要がある。

 遺骨収集を巡っては、フィリピンでの事業が「現地住民の遺骨が含まれている」との指摘を受け昨年まで8年間、中断した。16年には旧ソ連での作業中に、DNA鑑定の検体として採取した61柱分の歯を焼却するミスもあった。

 続発する失態の原因について「政府が人物の特定よりも、収集する遺骨の数に力点を置いているためだ」という指摘があるのは気掛かりだ。

 収集の難航は、当時の記録が乏しいことが要因として挙げられる。頼りだった戦友からの情報も年々減り、18年度の収集は836柱と、5年前の3分の1以下になった。

 国は収集推進法の成立を受け、24年度までを収集の集中実施期間としている。正確さを欠くことなく、作業を急がねばならない。

 遺骨収集の最大の目的は遺族に返すことである。厚労省は03年度以降、遺留品が記名されている場合などにはDNAを使って身元特定に努め、1200人近くの身元が判明した。しかし、DNA抽出の可能性が高い歯や手足の骨が残っていないと、検体として採取しないことなどに対して遺族らの不満は強い。

 その幅が広げられそうだ。遺骨収集の在り方に関する同省の有識者会議は頭蓋骨も検体とし、国内に持ち帰るとする中間とりまとめを今月公表した。現地で荼毘(だび)に付していた従来の方法を改める。

 これで遺骨の返還が進むかどうかは無論、見通せない。厚労省は鑑定を大学に委託しており、その態勢を充実させる必要などもあろう。

 遺族の高齢化も進み、作業は時間との闘いでもある。政府は重い責務を改めて肝に銘じ、ずさんさを排して誠実に取り組むことが求められる。

(2019年08月22日 08時00分 更新)

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