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食料の自給 生産基盤の強化が急務だ

 人間の根源的な営みである「食」を巡って、大きなリスクがあることを世界に訴える警告と言えよう。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が先日公表した特別報告書のことだ。地球温暖化の影響による干ばつなどの増加で、2050年に穀物価格が最大23%上がる恐れがある、とした。

 もし、そうした事態になれば、世界的に食料確保の競争が激しくなり、日本の食料供給が揺らぐ可能性もある。国内の食料生産体制の維持や、多様な輸入先の確保などリスクを低減する手だての重要性が一段と増している。

 だが、現実には日本の食料自給率は依然として低迷している。農林水産省が今月発表した18年度のカロリーベースの食料自給率は前年度より1ポイント下がり37%となった。天候不順で小麦や大豆の国内生産量が大きく減ったためで、冷夏でコメの記録的な凶作に見舞われ、タイ米などが緊急輸入された1993年度と並ぶ過去最低の水準だった。

 低迷が続く背景には、自給割合が高いコメの需要が減っているのをはじめ、外国産の飼料で育てられると国産とは見なされない畜産物の消費が増えるなど食生活の洋風化、輸入農産物の増加といった問題がある。農業生産者の高齢化や担い手の減少が進んでいることや、安価な輸入物との競争が厳しさを増していることも低迷の一因と言える。

 昨年末以降、環太平洋連携協定(TPP)や日欧経済連携協定(EPA)が相次いで発効しており、海外農産物の流入もさらに拡大する。食料自給率の向上には、国内農産物の消費拡大に加え、生産基盤の強化が不可欠だ。足腰の強い農業を実現することが求められる。

 調査開始の60年度には79%だった食料自給率は長期的な低下傾向が続く。農水省は農業政策の中期的な指針として2000年に策定した「食料・農業・農村基本計画」で、初めて自給率の向上目標を設定。政府は25年度に45%とする目標を掲げ、生産振興などに取り組んできたが、達成は程遠い状況だ。

 日本の自給率は、先進国の中でも最低水準にある。農水省の試算によると、主な国の自給率(13年、カロリーベース)は、オーストラリア223%、米国130%、ドイツ95%などとなっており、日本の低さが目立っている。世界的な食料不足や輸入が滞った事態に備える食の安全保障の観点からも、自給率の向上は欠かせない。

 農水省は、食料・農業・農村基本計画を5年ごとに見直している。来年3月には新たな基本計画を策定し、今後の自給率目標の在り方に関しても検討する予定だ。

 食に関わる農業の生産基盤の強化は極めて重大な課題である。条件の不利な中山間地を含め日本の農業の維持、発展に向けて、実効性ある政策を打ち出してもらいたい。

(2019年08月21日 08時00分 更新)

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