山陽新聞デジタル|さんデジ

混乱続く香港 事態収拾へ政府は対話を

 香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」の改正案に端を発し、香港社会が混迷の度合いを深めている。

 日本の盆休みに当たる先週は、条例に反対する若者たちの大規模な抗議活動が香港国際空港で行われた。アジア有数のハブ(拠点)空港を舞台に国際社会に向けて問題を提起しようという行動だ。だが、空港機能は停止し、市民生活にも甚大な影響が及んだ。

 おととい行われた抗議集会は、当局がデモ行進を不許可とする中で参加者が膨らみ、6月にあった200万人規模のデモに迫る勢いとなった。

 逃亡犯条例の改正案は、香港が犯罪人引き渡し協定を結んでいない国や地域に対しても身柄を渡せるようにするものだ。成立すれば、中国に批判的な活動家らを香港で拘束し、移送する手段ともなる。中国の習近平政権の意向が透けているとして反発が広がった。中国では、人権派弁護士らに対する弾圧が相次いでおり、そうした懸念が広がったのは当然だろう。

 反発の強さに、香港政府トップの林鄭月娥行政長官は、条例について「改正延期」、事実上の「廃案」と小出しに対処したが批判は収まっていない。市民は条例改正案の完全撤回に加えて、普通選挙の実現なども求めている。

 香港では5年前、事実上親中派しか行政長官選に立候補できない制度の導入に反発して民主化デモ「雨傘運動」が起きた。いったんは挫折したが今回、改めて制度への批判が高まっている。

 警察とデモ隊との緊張は高まる一方だ。鎮圧に当たる警察は催涙弾やゴム弾を使っており、それを目に受けた女性が負傷し、失明したとして市民の怒りを増幅させた。逆にデモ隊の一部は中国共産党系メディアの記者らに暴行を加えたともされる。一触即発の危険な状況から脱するために双方に自制が求められよう。

 長引く混乱は香港経済の足を引っ張り、観光客が旅行を取りやめるなど内外への悪影響も小さくない。「香港の自由」を求める市民に香港政府は正面から向き合い、対話に転じるべきである。

 見過ごせないのは中国の不穏な動きだ。香港に隣接する広東省深〓に武装警察を駐留させ、制圧訓練を行うなど武力介入をちらつかせている。トランプ米大統領はきのう、中国が民主化運動を武力で鎮圧した天安門事件を引き合いに出して中国をけん制した。

 仮に中国が実力行使に出るようなことがあれば、事態は一層悪化するのは必至だ。中国には国際的な非難も集中しよう。あの流血の惨禍を決して再現してはならない。

 トランプ氏は習主席と電話会談する意向も示している。影響力を発揮できるか注目されるが、中国側は「内政干渉だ」と反発しており、先行きは楽観できない。日本としても各国と連携しながら混乱の収拾に力を注ぐべきだ。

※〓は土ヘンに川

(2019年08月20日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ