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主権者教育 現場を萎縮させぬ支援を

 社会参加に関する高校生の意識を各国で比較した調査(日本青少年研究所、2009年発表)がある。

 「私個人の力では、政府の決定に影響を与えられない」という考え方について「そう思う」と答えた日本の高校生は80・7%に上った。韓国(55・2%)や中国(43・8%)、米国(42・9%)に比べて高い割合だ。

 選挙の低投票率は、こうした日本の若者の意識の表れだろうか。先月の参院選は全体でも有権者の半数以上が棄権したが、18、19歳に限ると3人に2人が棄権した。政治参加の権利を放棄し、政治家に白紙委任してしまうことは民主主義の根幹を揺るがしかねない。主権者教育を進めなければならない。

 15年6月の公選法の改正で選挙権年齢が18歳以上に引き下げられた。これを機に若い世代への主権者教育は以前より行われるようになったが、投票率は下がっている。総務省の調査によると参院選の18、19歳の投票率(選挙区)は31・33%で、前回16年参院選より約15ポイントも低下した。

 岡山県選管が抽出調査した県内の年代別投票率(選挙区)をみると最も低かったのは20~24歳の27・54%、次いで18、19歳の27・74%だった。ちなみに最も高かったのは65~69歳の66・62%である。

 文部科学省と総務省は15年に主権者教育の高校生向け副教材を作り、配布した。文科省の調査では15、16年度に9割以上の高校で主権者教育が行われ、各選挙管理委員会による出前授業も急増したという。だが、主権者教育の多くは選挙制度の紹介などにとどまっているとの指摘もある。

 副教材では制度の紹介に加え、「実践編」として政策論争や模擬投票などを挙げている。今後はそうした本格的な主権者教育を各地で広げていかなければならない。

 懸念されるのは学校現場を萎縮させかねない動きがあることだ。自民党は教員の「政治的中立」の逸脱に対して厳罰化を進めるとし、参院選公約にも掲げた。もちろん教員の立場を利用した選挙運動は禁じられているが、過度に政治的中立を求められれば、学校は主権者教育を敬遠するだけだろう。求められるのは学校現場を萎縮させることでなく、支援する取り組みだ。

 主権者教育の先進地であるドイツや英国などでは実際の政治テーマを取り上げる際も、意見を押しつけない限り、教員が自身の意見を述べることも認められている。政治的中立については他国の事例も踏まえて議論を深め、整理する必要がある。

 インターネットで玉石混交の情報が飛び交う時代だ。主権者は自ら情報を入手し、分析し、自分の意見を構築しなければならない。22年度から高校で設けられる必修科目「公共」は主権者教育に重点を置く。情報の見極め方も含め、有権者としての判断力を養う実践を広げたい。

(2019年08月14日 08時00分 更新)

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