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スポーツツーリズムの推進を 生涯現役の武士道精神を体感

生涯現役のIPU剣道部総監督・櫻間建樹先生(昭和23年生まれ)、剣道教士七段=写真提供・IPU剣道部監督の平田佳弘先生
生涯現役のIPU剣道部総監督・櫻間建樹先生(昭和23年生まれ)、剣道教士七段=写真提供・IPU剣道部監督の平田佳弘先生
「スポーツツーリズムの推進に向けたアクションプログラム2019」=2019 年 3 月 29 日スポーツツーリズム需要拡大のための官民連携協議会より抜粋
「スポーツツーリズムの推進に向けたアクションプログラム2019」=2019 年 3 月 29 日スポーツツーリズム需要拡大のための官民連携協議会より抜粋
 スポーツ庁は、関係省庁や企業等が連携し、日本全体での交流人口の拡大と「スポーツによる地域活性化」を狙った政策として、平成30年3月に「スポーツツーリズム需要拡大戦略」を策定し、新規重点テーマとして「アウトドアスポーツツーリズム」と「武道ツーリズム」を掲げた。
 
 この政策は、日本国内及び海外7か国・地域(中国・韓国・台湾・香港・米国・タイ・オーストラリア)を対象に、日本国内でのスポーツツーリズムに関わる消費者調査の結果を基にしたものである。
 
 それによると、日本国内の20代から60代の調査では、今後実際に経験してみたいスポーツツーリズムとしては、ウォーキング9.9%、登山・ハイキング・トレッキング8.9%、スノースポーツ・スノーアクティビティ8.3%、海水浴8.2%、スキューバダイビング6.2%であった。
 
 また、海外7カ国の調査では、国による違いはあるが、おおよそ日本で経験してみたいスポーツツーリズムは、武道、大相撲、スノースポーツ・スノーアクティビティ、登山・ハイキング・トレッキング、サイクリング、ウォーキング、マリンスポーツなどが上位を占めている。

 日本は、四季折々の自然の風景があり、パウダースノーのスキー場が大都市からすぐ近くにある。伝統武道から侍の精神性を感じることができる―といった声が聞かれるそうである。

 インターネットの普及は、情報発信・収集を容易にし、我々日本人が当たり前と思っている事や忘れ去られた伝統が、いまや広く世界の人々に知られるようになった。日本の様々な情報を得た海外の人々は、日本の良き伝統を高く評価している。特に、武道の作法、慣習などは、日本人以上に興味を持たれている。

 ブラジルやフランスでは、柔道は礼儀や倫理教育の手段としても活用され、参加人口も日本の数倍以上といわれる。フランスでは柔道指導者は国家資格が必要となる。

 特に、外国人観光客から人気が高いのは、武士道精神を体験し、学ぶことができる剣道である。海外の教養層や知識層は古くからの武士の考え方を取り入れ、人生を豊かにするために実践しているといわれる。
 
 武士道が世界に知られるようになったのは、新渡戸稲造の「武士道」であろう。今もって我々が参考になる精神性が書かれている。また、吉川英治の「宮本武蔵」をアレンジした、井上雄彦の「バガボンド」はコミック版として、一躍海外でも人気となっている。さらには、宮本武蔵の兵法書である「五輪の書」も、海外で知られるようになった。

 日本剣道連盟によると、剣道は剣の理法の修練による人間形成の道である―と理念を説明している。また、剣道修練の心構えとして、剣道を正しく真剣に学び、心身を錬磨して旺盛なる気力を養い、剣道の特性を通じて礼節を尊び、信義を重んじ誠を尽して、常に自己の修養に努め、もって国家社会を愛して、広く人類の平和繁栄に寄与せんとするものである―と制定されている。

 そのほかにも、剣道指導の心構え、竹刀の本位、礼法、生涯剣道などが制定され、剣道は、世代を超えて学び合う道である。「技」を通じて「道」を求め、社会の活力を高めながら、豊かな生命観を育み、文化としての剣道を実践していくことを指導の目標としている。
 
 ここ岡山県は、長船刀剣博物館、宮本武蔵の里、全国的に上位を占める岡山県警の剣道部など、剣道にまつわるすばらしい資源を有している。岡山県をあげて武道ツーリズムを推進してはいかがだろう。

 スポーツマンシップと武士道は、相通じるところがある。しかしながら、いわゆる一流スポーツ選手と剣道の達人は、少し異なる。現役一流スポーツ選手の年齢層は、20歳代から40歳代が多い。これに対し、剣道の達人といわれる方の多くは高潔な人格を有する高齢者であり、達人は現役である。このあたりがスポーツと心身錬磨を目的とする武道の違いだろうか。技だけでなく、日頃から姿勢良く、質素な生活を基とし手いる。生き方までをも指導するのであるから、自らの生き方そのものを律し、伝えている。実践している現役として、その言葉や示範にも真実味や重みがある。
 
 最近では、一流アスリートが、バラエティ―番組に出演する機会が増えた。視聴者には、日頃接することのないアスリートが身近に感じるようになるだろうし、楽しく拝見できる。アスリートの中には、引退後のセカンドキャリアを芸能界に求める選手たちもいる。だが、苦しかったこと、つらかったことが、お笑いのネタにされるのは少々残念だ。背に腹は代えられぬこともあろうが、スポーツ選手はリスペクトの精神を忘れてはならない。

 スポーツは、「する」「みる」「ささえる」といわれる。武道家は、生涯「する」を続けながら、後進を育てるために「みる」、そして「支える」を行っている。何よりも生涯現役は、素晴らしい。一流アスリートがさらに高みを目指すためにも、日本古来の武道家のお話を聞いてみてもよいだろう。

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三浦 孝仁(みうら・こうじ)博士(医学)IPU環太平洋大学・体育学部長・スポーツ科学センター長、岡山大名誉教授。公益財団法人岡山県体育協会スポーツ医・科学委員会委員。一般財団法人岡山市体育協会理事・スポーツ振興委員会・委員長。NPO HSA JAPAN代表理事。岡山大在職中に顧問を務めた同大ウェイトトレーニング部は10度の全国制覇を果たし、ハンドボール部は過去最下位から1部上位へ引き上げるなど、長年に渡りスポーツ指導・教育・研究やキャリア教育などに携わった。著書に「筋トレっち 走れるカラダの育て方」(東邦出版)など。早稲田大卒、日本体育大大学院 修了。1957年生まれ。

(2019年08月13日 13時52分 更新)

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