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近くにない…裁判所支部問題 身近な司法には数、質の充実必要 

裁判官が常駐しておらず、隔週の月2回しか開廷しない岡山地方(家庭)裁判所新見支部
裁判官が常駐しておらず、隔週の月2回しか開廷しない岡山地方(家庭)裁判所新見支部
 皆さんのお住まいの地域に裁判所があるかご存じでしょうか。少額な事件や民事調停を取り扱う簡易裁判所は、岡山県内で10カ所ありますが、岡山地方(家庭)裁判所は、岡山市内の本庁と、倉敷市、津山市と新見市の3支部の計4カ所しかありません。

 このように裁判所支部問題の一番の問題は、統廃合により支部の数が少なくなってしまい、地元で裁判を行えない市民が多く存在することです。例えば高梁市民の方は、遺産分割調停や交通事故の裁判(140万円以下の請求の場合は高梁簡易裁判所)などをするためには、高梁市中心部から約40キロ離れた岡山市内の岡山地方(家庭)裁判所本庁まで行かなければなりません。裁判所も近年身近な司法を目指してさまざまな活動をされていますが、そもそも物理的に身近な所に裁判所がないという問題があります。以前、地方裁判所の支部だったところが、簡易裁判所として残っているところも多いので、簡易裁判所を再び地方裁判所の支部に戻すことで、物理的にも身近な裁判所になるべきと考えます。

 成年後見制度の利用促進を裁判所だけでなく国をあげて進めていますが、その要となる市民後見人の増加や地域の社会福祉協議会やNPOによる法人後見の増加は、市民後見人やNPOなどが気軽に相談できる場所に裁判所がないと実現しないと思います。この点からも裁判所支部の増加が求められます。

 裁判所支部が少なくなったことをIT技術を利用して市民の物理的な距離の負担を軽減しているかというと、そういうわけでもなく、遠距離への対応は、電話会議とFAXで対応しており、いまだにメールでの裁判所資料の提出をすることはできず、IT技術の活用はされていません。この点については、遂に来年から一部の裁判所で試験的に裁判のIT化が図られるそうなので期待をしています。

 機能面の裁判所支部問題としては、ほとんどの支部で、労働審判や裁判員制度などの新しい裁判制度が行われていません。これは岡山県内に限ったことではなく、大都市の一部の裁判所支部を除いて、全国のほとんどの裁判所支部では労働審判や裁判員裁判が行われていません。

 労働事件の迅速な解決のための労働審判や、市民の良識を刑事裁判に反映する裁判員裁判を支部で行っていないために新しい制度の実効性が十分に確保できていません。例えば津山市民が裁判員に選ばれると、岡山市の裁判所本庁での裁判員裁判への参加になります。また、笠岡市民が労働審判制度を利用するためには倉敷支部を通り過ぎて岡山市の裁判所本庁まで行かないといけません。

 私の事務所のある岡山地方(家庭)裁判所新見支部では、裁判官が常駐していないため、隔週の月2回しか開廷しておらず、他の裁判所に比べると期日の間隔が長くなってしまう傾向にあります。

 もう一つの新見支部問題として、新見支部で刑事裁判が行われていないことです。これは、裁判所の問題ではなく、新見支部に岡山地方検察庁が刑事事件の起訴をしないためです。地元で刑事裁判が行われないことで、証人の出廷が困難になったり、事件に一番関心のある地元の人が裁判を傍聴できなかったりします。岡山弁護士会でも、新見支部で刑事事件を行うように岡山地方検察庁に求めていますが、岡山地方検察庁の説明では、検察官が多忙のために新見支部での裁判に対応する時間がないなどの理由により、長年刑事事件が新見支部では行われていません。早急に新見支部での刑事裁判の起訴をするよう岡山地方検察庁に求めます。

 支部問題は、市民の裁判を受ける権利にも関わる重大な問題です。解決のためには、裁判官や検察官の増員をする必要があります。ここ10年間で弁護士数は大幅に増えましたが、裁判官は近年減少しているようですし、検察官も少ししか増えておりません。裁判官の増員には、弁護士から裁判官になる人数を大幅に増やすことを提案します。

 裁判官や検察官が増えれば自然と一つの事件にかけることのできる時間は増えるので、裁判もより早く進みますし、より丁寧な審理が実現すると思います。

 また、裁判所は、一生に一度関わるか関わらないかという制度なので、市民の関心が高いとはいえませんが、市民の方に裁判所支部問題に関心を持ってもらい裁判所支部の数と質の充実を求める声をあげてもらいたいです。

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 大山知康(おおやま・ともやす)2006年から弁護士活動を始め、岡山弁護士会副会長など歴任し、17年4月から同会環境保全・災害対策委員長、18年4月から中国地方弁護士会連合会災害復興に関する委員会委員長。新見市で唯一の弁護士としても活動。市民の寄付を基にNPOなどの活動を支援する公益財団法人「みんなでつくる財団おかやま」代表理事も務める。19年1月からは防災士にも登録。趣味はサッカーで、岡山湯郷ベルやファジアーノ岡山のサポーター。青山学院大国際政治経済学部卒。玉野市出身。1977年生まれ。

(2019年08月14日 11時00分 更新)

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