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萩生田氏の発言 自民党のおごりが透ける

 安倍政権が改憲論議を進めるため、乱暴な国会運営をするのではないか。そんな疑念を持たれても仕方あるまい。

 安倍晋三首相の側近である萩生田光一自民党幹事長代行が、衆院憲法審査会での議論を進めるため、大島理森衆院議長を交代させる可能性に言及した。

 先月下旬のインターネット番組での発言だった。「今のメンバーでなかなか動かないとすれば有力な方を議長に置き、改憲シフトを国会が行うのは極めて大事だ」と述べた。さらに大島議長について「立派な方だが、どちらかと言えば調整型だ」と評した。

 衆院議長は衆院選後に本会議での選挙で選ぶのが通例だ。首相が意欲を示す改憲に協力しないなら任期途中でも議長を交代させようというのは、国権の最高機関を軽んじる暴言だ。「安倍1強」が続く自民党、中でも首相側近のおごりが透けて見えると言わざるを得ない。

 衆院議長は与党から選出されるが、所属会派を離脱して無所属となるのが慣例で、与野党の合意の下、国会運営に尽くすのが務めだ。大島議長といえば、森友学園を巡る公文書改ざんなど相次ぐ不祥事が問題となった昨年の通常国会の閉会時に、安倍政権に反省を促す異例の所感を公表したことも記憶に新しい。

 萩生田氏の発言には、野党だけでなく与党からも批判が上がった。自民党の石破茂元幹事長は「一党の幹事長代行が議長人事に口を出すとは恐ろしいことだ」と非難。自民党の二階俊博幹事長は「立場を考えて慎重に発言するように」と注意し、萩生田氏は大島議長に謝罪したという。

 しかし、これで幕引きとはなるまい。立憲民主党の枝野幸男代表は「権力分立原則や立憲主義への理解が十分でない。この程度の知識の方が憲法を語るから議論が進まない」と批判。野党は今後も追及する姿勢を示している。

 参院選で与党が改選過半数を得たのを受け、首相は「少なくとも議論は行うべきだという国民の審判が下った」と述べるなど、改憲に前のめりだ。だが、これには与党の公明党からも「議論すべきだと受け取るのは少し強引だ」(山口那津男代表)とブレーキをかける発言が出ている。

 参院選で自民党は議席を減らし、「改憲勢力」は国会発議に必要な3分の2の議席を割り込んだ。共同通信社の世論調査でも優先課題として改憲を挙げる人は少なく、国民の理解は広がっていない。

 憲法審の議論が進まないのは野党の抵抗だけが理由ではあるまい。萩生田氏は4月にも「憲法審をワイルドに進めたい」と発言した。首相側近の度重なる挑発は、「数の力で押し切られかねない」と野党の警戒感を招き、自由な憲法論議の妨げになっている。

 自民党がすべきは改憲ありきの姿勢を改め、各党と議論を深めることのできる環境を整えることだ。

(2019年08月02日 08時00分 更新)

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