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顕信ブーム、映画公開で再来か 各地に上映館拡大、句集も増刷

映画「ずぶぬれて犬ころ」の一場面
映画「ずぶぬれて犬ころ」の一場面
増刷された句集「未完成」。顕信の残した281句全てを収録する
増刷された句集「未完成」。顕信の残した281句全てを収録する
 早世した岡山市出身の俳人・住宅(すみたく)顕信(1961~87年)の人生を追う映画「ずぶぬれて犬ころ」の公開を機に、顕信への関心が再び高まっている。東京、大阪をはじめ上映館が各地に広がり、5月に封切った岡山では再上映が決定。顕信の死後に出版された句集「未完成」は16年ぶりに増刷された。映画を手掛けた本田孝義監督(赤磐市出身)は「命を削り句作に心血を注ぐ顕信の姿が、見る人に響いたのならうれしい」と喜んでいる。

 出家、急性骨髄性白血病の闘病、病院での子育て―と波乱の生涯を送った顕信。<気の抜けたサイダーが僕の人生><若さとはこんな淋しい春なのか>など、読む人の胸を刺す281句を残した。

 映画は、顕信の句に救われた経験のある本田監督が、クラウドファンディングなどで資金を募り製作。いじめを受ける男子中学生が顕信の句に触れ、その人生や作品に引かれていくストーリーで、岡山を皮切りに6月に東京、現在は大阪で上映中。愛知、長野、愛媛県など5カ所での公開が決まっている。

 東京・渋谷の劇場ユーロスペースでは好評のため、2週間の上映予定を4週間に延長した。「引きこもっていた時に顕信の句に生きる力をもらった若い女性、映画の評判を聞き、初めて顕信を知った俳句愛好者など多様な人が足を運んでくれた」と本田監督。

 劇中に登場する「未完成」の出版元・春陽堂書店(東京)は6月下旬、2003年以来の増刷に踏み切った。問い合わせが多く寄せられたといい、永安浩美編集部長は「出版から10年以上経過して増刷されるのは珍しい」と驚く。

 顕信ブームは精神科医の香山リカさんが作品を紹介したことを機に02、03年にも一度起きている。再来の予感に、句友として顕信と親交があった池畑秀一岡山大名誉教授は「時代を超えてなお、人の心を捉える作品の力強さを改めて感じている」と話す。

 吉備路文学館(岡山市北区南方)では、映画公開を記念した企画展を開催中。遺品の法衣や万年筆、病身でしたためた色紙など約230点が並ぶ。再上映はシネマ・クレール丸の内(同丸の内)で26日から8月1日まで。本田監督は「企画展と併せて見ることで、顕信の作品の世界をより深く感じられる」と呼び掛けている。

(2019年07月23日 22時42分 更新)

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