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倒壊危険の空き家…地権者80人 福山 撤去難航、頭抱える地域住民

倒壊の危険性が高まっている空き家=福山市神村町
倒壊の危険性が高まっている空き家=福山市神村町
 福山市神村町にある空き家が老朽化し、倒壊の危険性が高まっている。無人のまま40年近く放置されてきたが今春以降、一気に傷みが進行し地元住民から取り壊しを求める声が上がっている。市も対応を急いでいるが元の所有者は既に死亡しており、撤去には約80人に上る相続人全員の同意が必要となるため難航している。

 建物は木造2階(延べ約100平方メートル)で窓ガラスが割れ、雨戸の一部が落ちている。壁は東側に向かって大きくゆがみ、今にも倒れそうな状態だ。市によると建物の傾きは垂直に対して7度以上。危険度の判定基準で最高となるCランク(約3度)を大きく上回る。

 近くに住む60代主婦は「この前も瓦が落ちた。大型車が通るたびに振動で崩れるのではと心配になる。誰かがけがをしてからでは取り返しがつかないので、早く何とかしてほしい」と話す。交通量の多い県道福山尾道線に面し、朝夕は通学の中学生が行き交う場所。これまでも市に対して繰り返し危険性を訴えてきたという。

 建物は少なくとも築70年以上が経過。所有者の男性とその妻が死亡してから40年近く空き家になっているとみられる。今春以降傾きが大きくなったため市は5月、建物に柱を補強する筋交いを入れたり立ち入り禁止の立て札やロープを設置したりする緊急措置を講じたが、担当者は「あくまでも応急的な対応。危険を取り除くには建物を取り壊すしかない」とする。

 市では、近隣住民からの情報提供で2014年に空き家の存在を把握。18年4月、空き家対策特別措置法に基づいて放置すると倒壊などの危険性の高い「特定空家」に指定し、所有者に対して指導や勧告ができるようになったが、改善はみられないままとなっている。

 理由の一つが、所有権の複雑さだ。市が調査したところ、空き家は借地の上に建てられ、登記上の所有者の男性は50年前に既に死亡。現在は子、孫など4代にわたる計約80人の相続人による共有財産となっていることが判明した。

 撤去には全員の同意が必要で、費用は自己負担が原則。市は急ピッチで相続人と連絡を取っているが、県外在住や所在不明となっている人がいたり、自分が相続人となっていることを知らなかったりするケースもある。連絡がついた約40人が相続放棄を申し出ており、所有者による撤去の道筋はついていないのが現状だ。

 特定空家については、市による強制執行も可能だが、私有財産を侵害することになる上、税金を投入しなければならなくなる。費用回収ができない可能性もあるため慎重な対応を取らざるを得ないという。市住宅課は「市内の空家でもトップクラスに危険な建物と認識している。早急な対策に向けて、あらゆる手立てを講じていきたい」としている。

(2019年07月23日 18時07分 更新)

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