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改憲3分の2割れ 拙速な議論避けるべきだ

 公的年金制度や消費増税の是非などを主な争点にした第25回参院選はきのう投開票が行われた。焦点となっていた安倍政権下での憲法改正に前向きな「改憲勢力」については、国会発議に必要な3分の2の議席を維持することができなかった。

 ただ、自民、公明両党は改選124議席の過半数63を超え、安倍晋三首相や自公の幹事長が設定していた勝敗ラインはクリアした。一方、野党は立憲民主党が大きく議席を伸ばしたものの、共闘の在り方に課題を残した。

 選挙戦では、与野党が経済政策「アベノミクス」や地方創生などについても主張を繰り広げた。だが、かみ合った議論はほとんど聞かれず、論戦は総じて低調だったと言わざるを得ない。

 与党が重要課題の争点化を避けたことも論戦の盛り上がりを欠いた一因だろう。年金の給付水準を点検する財政検証の公表を政府は先送りし、日米貿易交渉では安倍首相はトランプ米大統領に対し、大枠決着を参院選後に持ち越すよう働き掛けたとされる。

 立民、国民民主など野党5党派は全国32の改選1人区で候補者を全て一本化し、与党と対決した。だが、個別の政策が必ずしも一致しているわけではなく、今回の共闘に広く有権者の理解が得られたとは言えまい。今後、野党は政策をしっかりと磨き上げ、政権批判層の受け皿として、与党に対(たい)峙(じ)できる存在となることが欠かせない。

 今後の焦点となるのは、安倍首相の改憲に向けた取り組みである。選挙戦で安倍首相は「改憲を議論する政党を選ぶのか、全く議論しない政党を選ぶのか」と改憲問題を前面に出して訴えた。立民など主要野党は9条の改憲阻止などを掲げて対抗した。

 ただ、改憲への関心が国民の間で高まっているとは言い難い。改憲勢力が3分の2を割り込んだこともあり、まずは与野党が衆参両院の憲法審査会で冷静に論じ合える環境を整えることが先決だ。拙速な議論は避けねばならない。

 国政選挙に連勝しているとはいえ、安倍首相は襟を正して政権運営に臨むべきだ。近年は「1強」体制の下、おごりが生まれ、数の力に頼った強引な国会運営も目立つ。異論にも丁寧に向き合い、説明責任を果たす姿勢が求められる。国民の関心が高い社会保障制度の将来についても、抜本的な改革を含めて明確な道筋を示すなど、国民の不安解消に努めてもらいたい。

 投票率の低迷が続いていることも深刻に受け止めねばならない。18歳から投票できるようになり、主権者教育も広がりつつあるが、投票率の下落傾向には歯止めがかからなかった。背景には今の政治に対する国民の不信感が深く関わっているのは間違いない。低い投票率は民主主義制度の根幹を揺るがしかねない。政治の信頼回復へ向け、与野党の取り組みが問われる。

(2019年07月22日 08時00分 更新)

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