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「京アニ」放火火災 許されぬ卑劣な犯行だ

 アニメ制作に情熱を注いできた多くの命が一瞬で奪われた。職場を突然包んだ炎と煙。何が起きたのか理解できないまま、人生を絶たれた犠牲者の無念を思うと胸が締めつけられるようだ。

 「京アニ」の愛称で知られるアニメ制作会社「京都アニメーション」の第1スタジオ(京都市伏見区)が放火され、34人が死亡、34人が重軽傷を負う大惨事となった。現場から逃げた41歳の男の身柄が確保された。

 男はさいたま市在住とみられ、身柄を確保された際、警察官に「小説を盗んだから放火した」という趣旨の話をしたという。現場周辺では、男のものとみられる複数の刃物も見つかった。制作会社との関係はまだ分からないが、一方的に恨みを募らせていたようだ。

 男はスタジオ1階の玄関から突然侵入し、「死ね」などと叫びながらバケツからガソリンをまき、持っていた柄の付いたライターで火を付けたとされる。玄関には専用カードを使って出入りするセキュリティーシステムがあったが、この日は来客の予定があり、システムを解除していたという。

 男自身もやけどを負って病院で治療を受けており、警察は回復を待って事情聴取する。動機をはじめ、事件の全容を解明する作業はこれからになる。ただ、どんな背景があるにせよ、決して許されない卑劣な犯行である。

 あらためて衝撃を受けたのはガソリンがまかれた火災のすさまじさだ。専門家によると、揮発性の高いガソリンは室内ですぐに充満し、爆発的に燃え広がる「爆燃現象」が起きるという。

 第1スタジオは3階建てで、2007年に新築された。玄関近くに、1階から3階にかけて吹き抜けのらせん階段がある構造で、これにより、建物内に炎と煙が一気に広がったとの見方もある。

 消防などによると、消防法が定める消火器や警報機は備え付けられていたが、延べ床面積などからスプリンクラーなどの設置義務はなかったという。当然ながら一般の事業所は、ガソリンをまかれて放火されるような事態を想定していない。

 まずは現場で何が起きたのか、警察、消防でしっかり検証してもらいたい。逃げ遅れた犠牲者が多く出たことを重くとらえ、事業所の防火対策の再点検も必要だろう。

 火災は世界中に報じられた。米国でスタジオ再建に向けた寄付金を募ったところ、すでに1億円以上が集まったというから驚く。日本のアニメが世界各国で愛され、多くのファンを獲得していることを再認識させられる。

 多くのアニメ制作会社が東京に集中する中で、京アニは地方に拠点を構えながら多くのヒット作を世に送り出し、存在感を発揮してきた。負傷者の回復とスタジオの再建を祈りたい。

(2019年07月20日 08時00分 更新)

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