山陽新聞デジタル|さんデジ

大学共通テスト 受験生にしわ寄せするな

 開始まで9カ月を切った中での変更に戸惑った受験生は少なくないだろう。2020年度に始まる大学入学共通テストに導入される英語の民間検定試験を巡り、8種類の試験のうち、「TOEIC」が参加を取り下げた。

 運営団体は「実施運営などの処理が当初想定していたよりかなり複雑なものと判明した」と説明している。民間団体に実施を委ねる弱みが露呈したと言えよう。

 大学入学共通テストは大学入試センター試験の後継で、センター試験で評価していた英語の「読む・聞く」だけでなく、「書く・話す」も含めた4技能を総合的に問うため、センターなどが民間検定試験の導入を決めた。現役生は原則、高3の4~12月に受けた試験の2回分の結果を使うことができる。

 共通テストの民間検定試験を受ける生徒のうち、TOEICの受験が想定されたのは約2%で、影響は限定的と文部科学省は強調している。それでも50万人超の受験生のうち、約1万人に上り看過できない。他の検定試験は大丈夫かという不安も生じよう。

 懸念はこれだけではない。検定試験は種類により検定料や実施回数、目的が違う。それを同列に比べることや、居住地域や家計の状況で試験を受ける機会が左右されるのを問題視する声は根強い。

 それが表れたのが、文科省が5月末に公表した国立大全82校の活用予定だ。岡山大、広島大、香川大を含む半数近くは一定以上の成績取得を出願資格とするが、点数化してマーク式問題に加点するのは見送った。

 このうち、東大や京大など8校は高校が英語力の証明書を出せば出願を認める「抜け道」を用意した。このほか、東北大など3校は全学部で検定試験を使わないとした。

 同時に発表した公立大の検討状況では8割が利用するとしたが、岡山県立大はいったん利用を表明した方針を変更し、初年度は利用しないとした。一方、私立大はまだ決まっていないところが多く、速やかな公表が求められる。

 「もっと早く詰められなかったのか」など高校教員らの批判は強い。英語が専門の大学教授は先月の記者会見で、公平性が確保されず受験生に不安が広がっているとして、当面の利用中止を訴えた。

 大学入学共通テストを巡っては、英語の民間検定試験と並ぶ目玉である国語、数学の記述式問題のうち、数学の文章記述を初年度は見送り、数式のみを記述させる方針を決めた。昨年11月の試行調査で正答率が低迷したためだ。

 変更に当たっては迅速で丁寧な周知が重要である。甘い制度設計で突き進んできたしわ寄せを受験生が受けることがあってはならない。

 英語は23年度までセンター作成のマーク式問題を併存させた後、民間試験に全面移行の予定だが、初年度の状況を踏まえ慎重に検討すべきだ。

(2019年07月19日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ