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〈抱っことは/抱きあうことか/…

 〈抱っことは/抱きあうことか/子の肩に顔うずめ/子の匂いかぐとき〉。俵万智さんの歌は、子育ての日々を鮮やかに思い出させてくれる▼かけがえのない小さな命。ただ無事に育ってと祈るような思いで抱き締めた記憶が筆者にもある。それがいつからだろう。わが子に対し「もっと、もっと」と求めるようになってしまうのは▼この父親にもわが子を無心で抱き締めた日があったろう。3年前の事件である。「受験勉強をしなかった」と父親は小学6年の一人息子の胸を包丁で刺した。自身の母校でもある私立中に進学させようとし、息子が反抗すると刃物で脅していたという▼殺人罪に問われ、あす名古屋地裁で判決が出る。「教育の名を借りた虐待」と検察側は論告で批判した。実はこの父親も受験を巡り親から暴言や暴力を受けていた▼教育虐待という言葉が注目されている。親が教育熱心なあまりに子どもに過度な期待をし、思い通りの結果が出ないと厳しく叱責(しっせき)したり、暴力を振るったりする。子どもを緊急保護する各地の民間施設「子どもシェルター」にも教育虐待から逃げてくる子が少なくない▼「ルポ教育虐待」などの著書がある教育ジャーナリスト、おおたとしまささんが親に呼び掛けている。「子どもは自分とは別の人間だと思えていますか」。胸に手を当ててみたい。

(2019年07月18日 08時00分 更新)

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