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自然災害債務整理ガイドライン 二重ローン問題の解決に向けて

災害支援ネットワークおかやまの合同報告会で話す筆者
災害支援ネットワークおかやまの合同報告会で話す筆者
 平成30年7月豪雨から1年が経過しました。先日は災害支援ネットワークおかやま支援1年合同報告会が開催され、支援活動を行っているNPO団体ボランティア団体による発表がありました。報告会を通じて1年間の支援活動の成果や活動を通して見えてきた課題を知ることができ、支援団体の被災された方に寄り添う姿勢を改めて感じることができました。私も、岡山弁護士会の被災者支援活動とみんなでつくる財団おかやまの「ももたろう基金」(平成30年7月豪雨災害被災地支援基金)の活動報告をしました。その際に、被災者支援制度については簡単な紹介にとどめたのですが、メモをとられる方も多く、終了後に詳しく話を聞かせてほしいと声もかけられました。

 そこで、今回のコラムは、岡山弁護士会の被災者支援活動の一つの柱である「自然災害債務整理ガイドライン」について説明します。岡山弁護士会に寄せられている災害法律相談で一番多いのは、被災により自宅が損壊してしまった場合の既存の住宅ローンの支払いと、自宅再建のために新たにローンを組むことに関するいわゆる二重ローンについての相談です。過去の災害でも多かった二重ローンに苦しむ方を減らすために作られたのが、自然災害債務整理ガイドラインです。

 自然災害債務整理ガイドラインとは、災害救助法の適用を受ける自然災害の影響で、住宅ローンなど債務の支払いが困難になった方が、相当額の財産を手元に残しながら、災害前の住宅ローンなどの債務について減額や免除を受けることができる制度です。平成30年7月豪雨でも適用されます。

 具体的には、500万円までの財産と、それとは別に被災者生活再建支援金、災害弔慰金、災害障害見舞金および平成30年7月豪雨の義援金を手元に残すことができます。

 また、自然災害債務整理ガイドラインを利用しても、個人信用情報(ブラックリスト)に登録されないので、自然災害債務整理ガイドラインを利用してローンを減額した後に、住宅ローンなどの生活に必要なローンも新たに申し込めます。

 自然災害債務整理ガイドラインの対象は、住宅ローンに限定されず債務全般が対象ですので、自動車ローンなども含まれます。会社などの法人は、対象となっていませんが、個人事業主の方の事業資金のローンについても対象となっています。

 また、弁護士による自然災害債務整理ガイドラインの手続き支援や不動産鑑定士による不動産の価格評価も無料で受けられますので、二重ローンに悩んでおられる方はぜひ自然災害債務整理ガイドラインの利用をご検討ください。

 しかし、自然災害債務整理ガイドラインには、いくつか条件があり、災害前から借金の返済が困難になっていた場合には使えません。また、世帯年収730万円未満であることが基準とされていることから、共働きのご家庭がこの基準を満たさずに自然災害債務整理ガイドラインを利用できないケースもあるようです(なお、730万円以上の世帯収入でも自然災害債務整理ガイドラインの利用が認められるケースもあるので、弁護士にご相談ください)。

 最終的に、簡易裁判所での特定調停という制度を利用して、債権者である金融機関と合意をすることで借金が減額及び免除となります。

 現在、岡山県内では、約190件の自然災害債務整理ガイドラインの申請があり、手続きが進んでいますが、その中で、自然災害債務整理ガイドラインの最初の運用事例となった熊本地震と異なり、平成30年7月豪雨では浸水被害が多かったことから、土地や建物の基礎及び柱が毀損せずに残っていることから不動産の価値が災害前と比べてそれほど下がっていないと判断されるケースが多く、減額されるローンの金額が少なくなる傾向が見られます。また、返済期間は5年が基準とされていますが、返済額が多い場合には5年を超える返済期間での合意がなされるケースが増える見込みです。

 このような違いは出てきていますが、熊本地震において自然災害債務整理ガイドラインの前例が蓄積されていることから、平成30年7月豪雨では、熊本地震のケースより早く解決するケースが多くなる見込みですので、時間がかかるので利用するかどうか迷っている方はもう一度自然災害債務整理ガイドラインの利用をご検討ください。

 最後に、自然災害債務整理ガイドラインは、ガイドラインであり、法律ではないので、ケースによっては金融機関が柔軟に対応してくれて、被災された方に有利な条件で解決するケースもありますが、ケースによっては、厳しい条件をなかなか譲ってもらえないこともあるなど、解決まで時間がかかってしまうこともありますので、被災された方の間で不公平にならないように自然災害債務整理ガイドラインを法律で定める必要があることを指摘させていただきます。

 個別のケースの相談は、岡山弁護士会災害無料電話相談(電話0120―888―769、毎週月曜日・正午から午後4時⦅ただし月曜日が祝日の場合は火曜日⦆、9月30日まで)にご相談ください。

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 大山知康(おおやま・ともやす)2006年から弁護士活動を始め、岡山弁護士会副会長など歴任し、17年4月から同会環境保全・災害対策委員長、18年4月から中国地方弁護士会連合会災害復興に関する委員会委員長。新見市で唯一の弁護士としても活動。市民の寄付を基にNPOなどの活動を支援する公益財団法人「みんなでつくる財団おかやま」代表理事も務める。19年1月からは防災士にも登録。趣味はサッカーで、岡山湯郷ベルやファジアーノ岡山のサポーター。青山学院大国際政治経済学部卒。玉野市出身。1977年生まれ。

(2019年07月14日 11時00分 更新)

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