山陽新聞デジタル|さんデジ

白血病経験 最後の夏は学生コーチ 玉野高野球部の谷本さん裏方徹す

学生コーチとして練習でノッカーを務める谷本さん
学生コーチとして練習でノッカーを務める谷本さん
 「試合に出られないのは分かっていたが、部に残ってチームの力になりたかった」。玉野市の玉野高3年の谷本駿さん(19)は硬式野球部の学生コーチだ。入学前に患った白血病の治療で留年したため、昨夏に選手としては引退。この1年は裏方に徹した元主将が、後輩たちと“最後の夏”に挑む。

 岡山市内の硬式野球チームでプレーし、高校野球での活躍を目標にしていた中学3年の11月、急性リンパ性白血病を発症した。治療を考えて高校は近くの玉野高に進学。入学後も1年の秋ごろまで入院が続き、留年が決まったが、もう一度、ボールを握るという希望を支えに、苦しい抗がん剤治療に耐えた。

 退院して野球部に加わると、人格や苦労した経験を買われ、2度目の1年生の夏に主将を任された。規定で選手としては最後となった昨年の岡山県大会、三塁コーチボックスからチームを鼓舞し、代打で打席にも立った。

 中学生のころに思い描いていた高校野球とは少し違ったが、「分け隔てなく接してくれる一つ年下の同級生たちに助けられた」と振り返る。引退後、迷わず学生コーチを申し出た。毎日、グラウンドに出て、ノックやウエートトレーニングの補助などで選手をサポートしてきた。

 「アドバイスなんてできない。手伝っているだけ」と謙遜するが、クラスが同じでよく相談に乗ってもらっているという山名海至主将(18)は「谷本さんの存在感は大きい。チームがまとまらないときもさりげない一言で助けてくれる」と感謝する。戸田健太郎監督(38)は「練習の補助だけでなく、選手に対するちょっとした声かけや気配りで、メンタル面を支えている」と話す。

 昨夏の大会後、本気で野球をやるのは高校が最後と決めた。卒業後は救急救命士を目指す。病気で多くの人に助けられたから、人の命を救う仕事を志す。でも、どんな形でも野球には関わり続けたいと思っている。「選手でもコーチでも好きな野球ができることが自分の原動力だったから」

 初戦は13日の開幕日、倉敷市営球場で天城高と対戦する。谷本さんは試合前のシートノックでサブノッカーを務める。「昨年は、初戦突破にあと一歩が届かなかった。今年の選手は自分たちの力を信じて頑張ってほしい」。1試合でも多く、後輩たちと一緒にグラウンドに立つことが今の目標だ。

(2019年07月11日 15時22分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ