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茶色に覆われた町 戻ってきた“日常の色” 自転車から見る真備の変化

 西日本豪雨の発生から1年。岡山県内で最大の被害を受けた倉敷市真備町は復興の途上にある。山陽新聞は被災直後からビデオカメラを付けた自転車を走らせ、この町の姿を記録してきた。過去の映像と比較しながら「真備の今」を伝える。

■「明るい…」違和感

 梅雨入り前の6月18日、過去4回(昨年7月12日、同20日、8月7日、11月2日)と同じく、西隣の矢掛町側から真備町に入った。

 倉敷市などの工業エリアのベッドタウンでもある真備町は山と川に囲まれ、田園と住宅地がパッチワークのような景色を織りなす。ローカル線の井原鉄道が走り、幹線道沿いには店舗や会社事務所、病院が並ぶ。穏やかで適度に開けた町だ。

 「明るい…」。取材当日は曇り空だったにもかかわらず、住宅地を走ると不思議な印象を受けた。その違和感の理由はすぐに分かった。被災家屋が取り壊され、視界が開けすぎているためだ。

 「売地」の看板が立つさら地があり、その向かいの住宅は建て替えられ、荷物が運び込まれていた。足場が組まれ、リフォームや新築工事の槌音(つちおと)があちこちに響く一方で、壊れたままの状態で残されている住宅もまだ多い。

 ここで暮らしを再建する人、離れる決断をした人、戻りたくても戻れない人、迷っている人…。住宅地の光景は、住民それぞれの決断や苦悩を伝えているようだ。

住宅地では家屋の立て直しなど、復興に向けた動きが加速している=(左上から時計回りに)18年7月20日、8月7日、11月2日、19年6月18日
住宅地では家屋の立て直しなど、復興に向けた動きが加速している=(左上から時計回りに)18年7月20日、8月7日、11月2日、19年6月18日


■「再開」続々

 幹線道路沿いを進むと「再開」の文字が書かれた看板やのぼりが目立つ。スーパー、飲食店、衣料品店、医療機関、信用金庫など被災後に休業を余儀なくされたさまざまな事業所が続々と業務を再開させている。

 被災直後の取材では、屋内にも土砂が押し寄せていたデイサービス施設。建物が再建され、お年寄りたちが笑顔で体を動かしているのが窓越しに見えた。

 昼時、飲食店の様子を見ると、どこも結構な込みようだ。駐車場では工務店や住宅設備など建設関係の会社名が入った車を多く目にする。混雑を避け、昼過ぎにうどん店に立ち寄ったが、既に「玉切れ」。地区外の仮設住宅から足を運んでくる常連客もおり、連日にぎわっているという。

被災した金融機関の支店が新築オープンするなど、地区内では事業所が続々と再開している=(左から)18年11月2日、19年6月18日
被災した金融機関の支店が新築オープンするなど、地区内では事業所が続々と再開している=(左から)18年11月2日、19年6月18日


■復興の息吹
 
 川沿いを走る。堤防の決壊箇所では重機が慌ただしく動いていた。被災直後、応急処置で土のうを積んだだけだった場所に土が盛られ、コンクリートの護岸が築かれている。

 豪雨により、真備町内では4河川(小田、末政、高馬、真谷)の8カ所で堤防が決壊。6月末までに全ての復旧工事が完了し、元の高さにまで復元された。河川を管理する国と県は、さらに安全性を高めるため、堤防をかさ上げ、拡幅するなどの治水対策を進めている。

 堤防沿いの田んぼに目をやると、水が張られ、緑の苗が風に揺れていた。豪雨から1年が過ぎた今、撮影時と比べ、その緑はより深くなっている。1年前、濁流にのまれ、茶色に覆われた町に戻ってきた“日常の色”。豪雨の爪痕の中から復興の息吹が芽吹き始めた「真備の今」を象徴しているようだ。

決壊した支流の堤防を小田川に向かって進む。現在は住宅が取り壊され、堤防の拡幅工事が行われていた。その周りの田は水が張られ、苗が植えられていた=(写真上から)18年11月2日、19年6月18日
決壊した支流の堤防を小田川に向かって進む。現在は住宅が取り壊され、堤防の拡幅工事が行われていた。その周りの田は水が張られ、苗が植えられていた=(写真上から)18年11月2日、19年6月18日


(2019年07月12日 10時00分 更新)

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