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亡き息子思い被災住宅自力で改築 真備の夫妻 素人ながら9カ月かけ

再建した自宅で、晃司さんの写真を手にほほえむ山本富美枝さん(右)と晃さん
再建した自宅で、晃司さんの写真を手にほほえむ山本富美枝さん(右)と晃さん
 西日本豪雨で被災した倉敷市真備町川辺の山本晃さん(76)、富美枝さん(75)夫妻が、自力で自宅をリフォームし、再び真備で生活を始めた。22年前に交通事故で亡くなった息子の思い出が残る家を「必ず残したい」と再建を決意。建築作業は未経験ながら、約9カ月かけて完成させた。

 玄関を入ると、温かみのある板張りの空間が広がる。洗面所の鏡の横には、富美枝さんが希望した手作りの収納スペースや照明がある。どれも晃さんが手作業で仕上げた。

 木造2階の山本さん宅は、西日本豪雨で1階が完全に浸水。2階に逃げて救助された夫妻は、一帯の悲惨な光景に「もうあの家には住めない」と諦めかけた。

 自宅は長男晃司さん=当時(23)=が急逝した翌年の1998年に新築。資金に保険金を充て、2階に思い出の品を集めた部屋を設けるなど、息子への思いが詰まっている。被災から数日後には「やっぱり壊せない」と改築を決めた。

 ただ、全壊した家を直すには多額の資金が必要になる。豪雨直前の6月末に火災保険の水害補償を外したばかりで、費用の工面は難しい。そこで夫妻が出した結論が「自分たちで」だった。

 被災から間もない7月に片付けに着手。炎天下、むせかえるような湿気と泥の臭いに耐えながら、散乱した家具や日用品を処分し、床や壁板を剥がして断熱材を取り除いた。

 その後、壁や天井、床の張り替えを始めたが、2人は全くの素人。本で調べたり、建築業者から助言してもらったりしながら作業を進めたという。

 使えなくなった座卓の天板だけを再利用し、テーブルに改造するなど工夫。泥の臭いを抑えるため香りの良い杉材を用い、天井裏に炭もまいた。

 「自分でやるからこそ、自由にこだわってできた」と晃さん。被災前に首を悪くしていたが「体調が良くなった。無理やりのリハビリです」と笑う。

 自宅は今年4月にほぼ完成。みなし仮設住宅を解約し、懐かしいわが家で本格的に生活を始めた。改築費用は約400万円だった。

 豪雨で押し寄せた水は晃司さんの遺品を置いていた2階の手前で止まった。富美枝さんは「2階まで浸水すれば命の危険もあったが、きっと息子が守ってくれた。この家でまた新しい思い出をつくっていきたい」と話す。

(2019年07月03日 19時14分 更新)

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