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豪雨被災後初 1500点窯出し 和気の備前焼作家・中居さん

登り窯の前で焼き上がった作品の出来を確かめる中居さん
登り窯の前で焼き上がった作品の出来を確かめる中居さん
裏山から流入した土砂で埋まった登り窯=2018年7月8日(中居さん提供)
裏山から流入した土砂で埋まった登り窯=2018年7月8日(中居さん提供)
 昨年7月の西日本豪雨で、自宅兼仕事場に裏山から大量の土砂が流れ込む被害に遭った備前焼作家・中居靖さん(58)=岡山県和気町=が、被災後初めてとなる窯出しを行った。県内に甚大な被害をもたらした災害から11カ月余り。中居さんは「災害に負けないという一心で前に進んできた。土砂の撤去など後押ししてくれた地域の方々に感謝したい」と話している。

 「バキ、バキ…」。昨年7月7日午後4時ごろ。中居さんの耳に、聞き慣れない大きな音が響いた。正体は大量の水を含んだ土砂が崩れ、裏山の木をなぎ倒す音だった。家から飛び出して高台に避難したが、周辺はあっという間に「土砂の海」に。山に最も近い自宅は腰の高さまで土砂に埋まり、27年間苦楽を共にしてきた登り窯や工房にも流入した。

 すぐに妻と息子2人を連れ、地元の公民館に避難した。様子を見ようと翌日、自宅に戻った中居さんが目にしたのはあまりにも無残な光景。茫然(ぼうぜん)自失となったが「絶対に復活させる」と気持ちを切り替えたという。

 避難所と借家暮らしは半年間に及んだが、地域住民らの手助けもあり、自宅などから少しずつ土砂を除去。長さ8メートル、幅3メートルの登り窯の修復を続けながら、昨年10月下旬に作陶を再開させた。

 業者などから注文が入っていた食器や花入れ、酒器など約1500点を準備。5月8日から作品を詰め始め、同18日に念願の火を登り窯に入れた。

 一家4人で苦難を乗り越えてきた中居さんは「湿気の問題も考えたが、思った以上の焼け具合になった。今後も前を向き、作陶に励みたい」と意気込んでいる。

 中居さんは松江市出身。地元の高校を卒業後、県重要無形文化財保持者の山本雄一氏に師事し、1992年に現在地に登り窯と自宅を築いた。

(2019年06月12日 17時48分 更新)

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