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内田百閒の戦前・戦中日記刊行 激動期の身辺を鋭く観察

百閒の誕生日に合わせて刊行される「百鬼園戦前・戦中日記」
百閒の誕生日に合わせて刊行される「百鬼園戦前・戦中日記」
 岡山市出身の小説家、随筆家内田百閒(1889~1971年)の生誕130年を記念し、未発表だった戦前期を含む日記を翻刻・編集した「百鬼園戦前・戦中日記」(上下巻)が、百閒の誕生日の29日に刊行される。混迷する社会に翻弄(ほんろう)されつつも、時代を冷静に見つめた文豪の視点や日常がつづられ、ファンらの注目を集めそうだ。(内田百閒の「けん」は、門構えに月)

 二・二六事件が起きた36年から太平洋戦争末期に入る44年10月末までを収録。記述は一日3行程度と短いが、体調を崩した息子の元に二・二六事件の影響ですぐに駆け付けられず〈ぢりぢりした〉と憤りを吐露する父親としての姿や、教え子たちが出征したり、防空演習が行われたりと戦争が徐々に生活に影を落とす様子を丁寧に記録する。

 日記は百閒の門下生だった作家平山三郎さん(2000年死去)の遺族が、02年に岡山県郷土文化財団に寄贈。財団と百閒の遺族で内容を精査してきた。36~42年の日記(42年は平山さんの写本)は未発表。43、44年分は過去に出版された全集に既出だが、今回読みやすく再編集した。44年11月以降の日記を基に空襲下の生活を記した「東京焼盡(しょうじん)」は百閒の代表作の一つ。

 同財団の万城あき主任研究員は「作家としての矜恃(きょうじ)を持ち、激動期の身辺を鋭く細やかに観察していたことが分かる。節目に当たり、東京焼盡に至るまでの歩みを知ってもらえれば」と話している。

 慶應義塾大学出版会刊。四六判、上巻402ページ、下巻384ページ。各巻4860円。県内の主な書店や吉備路文学館(同市北区南方)で販売する。36~41年の日記は同館の特別展で6月2日まで公開中。

(2019年05月28日 22時52分 更新)

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