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心不全対応図る玉野の医療機関 専門外来開設や病院間連携進む

昨秋から岡山赤十字病院の玉野分院で診療を始めた福家部長(右)
昨秋から岡山赤十字病院の玉野分院で診療を始めた福家部長(右)
 社会の急速な高齢化とともに、心不全の患者が大幅に増加する「心不全パンデミック」が懸念されている。そうした事態に備えて、玉野市内では心疾患対応の医療体制の充実が図られている。市立市民病院には岡山大病院が専門医を派遣し、岡山赤十字病院は玉野分院で昨秋から週1回の専門外来を開設。医師たちは息切れや動悸(どうき)を「年のせい」とせず、早期受診を呼び掛ける。

 「心臓の動き、ちょっと落ちていますね」。心電図の検査結果に目を落としていた岡山赤十字病院の福家聡一郎循環器内科部長が顔を上げる。受診していた市内の83歳の男性に、狭心症と不整脈の疑いを告げた。

 男性は地元のかかりつけ医に息切れを訴えたところ、玉野分院で専門医の診察を受けるよう勧められた。昨秋から分院で診察している福家部長は、検査結果から岡山市の本院で入院を伴う心臓カテーテル検査が必要と判断。その場で本院に電話し、入院の日取りまで決めた。

 男性は検査から入院の予約まで、身近な分院で1度の受診で済ませることができたが、従来なら岡山市の本院に、3回ほど足を運ぶ必要があった。「年を取ると岡山へ行くだけで大変。近くで専門医の診断も受けられ安心です」と男性。心不全となる前の段階での早期治療につながった。

 心不全は、体に血液を巡らせる心臓のポンプ機能が落ち、息切れやむくみが起き命を縮めてしまう。心筋梗塞や高血圧、弁膜症、不整脈などが原因となって生じる。高齢化を背景に急増し、推計によると、国内の心不全患者は2020年に120万人、30年に130万人と「異次元」に増えていく見通し。

 昨年10月1日現在の市の高齢化率は、全国平均より10ポイント近く高い37・9%。福家部長は、疫学的に市内の心不全患者が市人口の1%、少なくとも600人はいるとみている。「老齢で運転できない人も多い。岡山市での専門的な医療を要する場合を除き、高齢者がなるべく地元で医療を完結できることが望ましい」と強調する。

 地域で完結する医療の実現へ向けて、病院間の連携も進む。玉野分院では心臓のCT(コンピューター断層撮影)検査ができないため、岡山大病院の専門医2人が週3回診察する市立市民病院に協力してもらう。

 専門医がいる市民病院では収縮を繰り返す心臓の拍動を薬でコントロールし、CT検査で鮮明な画像を撮れる。分院ではCTが必要な患者に、本院か市民病院か検査を受ける病院を決めてもらうが、これまでの約10人は全員が市民病院を希望した。

 心不全は悪化して入院を繰り返すたびに体の状態が悪くなり、入院前のレベルに回復することはないとされる。再入院を防ぐ患者のフォローアップが重要で、市民病院の江尻健太郎医師は「フォローについても地域の医療機関の連携が大切。そのためにも互いに『顔の見える関係』をつくっていきたい」と話している。

(2019年05月22日 10時29分 更新)

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