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悪徳商法被害の救済と予防へ 適格消費者団体の取り組みとは

初の差し止め訴訟を提起し、会見するNPO法人消費者ネットおかやまの関係者。右端が筆者で、その隣は理事長の河田英正弁護士=2017年7月21日
初の差し止め訴訟を提起し、会見するNPO法人消費者ネットおかやまの関係者。右端が筆者で、その隣は理事長の河田英正弁護士=2017年7月21日
消費者ネットおかやまのイメージキャラクター「こびっとちゃん」。消費者(コンシューマー)の声を聴く長い耳を持つうさぎ(ラビット)です
消費者ネットおかやまのイメージキャラクター「こびっとちゃん」。消費者(コンシューマー)の声を聴く長い耳を持つうさぎ(ラビット)です
 悪徳商法被害や消費者被害といわれる、市民が詐欺的商法により多額の財産を失う被害についての報道などを皆さんもよく目にされていると思います。消費者庁などの行政や弁護士などの専門家も悪徳商法被害回復や悪徳商法撲滅活動を日々行っていますが、新たな悪徳商法が次々と出現して悪徳商法を無くすことができておりません。

 このような状況の中で、悪徳商法被害の救済や予防を期待されている適格消費者団体という制度があります。適格消費者団体とは、消費者契約法に基づき、個々の消費者に代わって事業者の不当な勧誘や不当な契約条項について差し止め請求訴訟を提起できる団体です。

 適格消費者団体になるにはさまざまな要件があり、まだ全国に19団体しかなく、岡山県内ではNPO法人消費者ネットおかやま(以下「消費者ネットおかやま」といいます)が唯一の適格消費者団体です。私は、消費者ネットおかやまの副理事長を務めています。

 消費者ネットおかやまは、2007年6月6日に設立され、2015年12月8日に内閣府から全国13番目の適格消費者団体として認定を受けました。一度、認定を受ければ適格消費者団体であり続けられるのではなく、認定には有効期間があり、消費者ネットおかやまは、2018年11月30日に2024年12月7日までの認定期間更新をすることができました。

 弁護士は、被害を受けた消費者から依頼を受けないと、悪徳業者に対し交渉や訴訟提起ができないのですが、適格消費者団体は、消費者の依頼も不要で、実際の被害を証明しなくても差し止めの申し入れや差し止め請求訴訟の提起を行うことができます。これにより、悪徳商法被害の未然の被害予防やさらなる被害の拡大の早期防止を実現できます。例えば、本来は製造物責任等を負うはずであるのに商品に事業者の損害賠償責任を免除するタグが付いていたものを改善でき、直後に同じ事業者の商品で手を切る事故が発生した際に事業者の損害賠償責任を認めることができたケースもありました。

 消費者ネットおかやまの活動は、消費者、相談員や専門家などから情報提供をいただいたり、消費者ネットおかやまのメンバーの調査で不当な勧誘や不当な契約条項を発見したりすることから始まります。消費者ネットおかやまでは、2017度は情報提供18件、18年度は情報提供31件を受け、17年度は、差し止め・申し入れ・照会活動を差し止め訴訟1件を含めて7事業者に、18年度は、差し止め・申し入れ・照会活動を17事業者に対して行いました。

 現在、悪徳商法の被害者らに代わり、消費者団体が金銭面の被害回復を求めて訴訟を起こせる「特定」適格消費者団体(全国で3団体のみ)を消費者ネットおかやまは目指しています。特定適格消費者団体になれば、訴訟提起の手間や費用の点から泣き寝入りをしている被害者に代わって、団体が損害賠償請求訴訟を提起することができます。裁判所で損害賠償義務が認められれば、訴訟に参加する被害者を募り、裁判所が被害者ごとの損害額を認定して、損害賠償を受けることができます。これにより、被害者は、訴訟準備の負担や、訴訟で損害賠償請求が認められないリスクを回避することができ、悪徳商法被害回復につながります。

 特定適格消費者団体になるためには、会員数や、差し止め・申し入れ・照会活動件数を増やす必要があります。また、団体としての組織基盤を拡充させる必要もありますので、不当な勧誘等についての皆さまの情報提供や当法人への会員としての参加をお願いします。情報提供については、自分がだまされたという情報はもちろん、チラシやインターネットで不当な表示などを見つけたというものでもかまいません。また、いきなり会員となることが難しければ少額の寄付でご支援いただくこともできます。

 また、悪徳商法被害は、消費者個人だけの問題ではなく、多くの適法な営業を行っている企業にとっても、同じ業界に悪徳業者が現れて業界全体の信用が損なわれたり、悪徳業者に顧客を奪われたりします。このように企業にとっても悪徳商法被害は深刻な問題ですので、消費者ネットおかやまは企業からの情報提供や寄付も募集しております。

 消費者ネットおかやまに興味を持っていただけた方は、NPO法人消費者ネットおかやまのホームページをご覧ください。

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 大山知康(おおやま・ともやす)2006年から弁護士活動を始め、岡山弁護士会副会長など歴任し、17年4月から同会環境保全・災害対策委員長、18年4月から中国地方弁護士会連合会災害復興に関する委員会委員長。新見市で唯一の弁護士としても活動。市民の寄付を基にNPOなどの活動を支援する公益財団法人「みんなでつくる財団おかやま」代表理事も務める。19年1月からは防災士にも登録。趣味はサッカーで、岡山湯郷ベルやファジアーノ岡山のサポーター。青山学院大国際政治経済学部卒。玉野市出身。1977年生まれ。

(2019年05月14日 11時00分 更新)

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