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愛され半世紀、名物洋食店が閉店 倉敷「グリル大島」常連ら惜しむ

サラリーマンらの人気店だった「グリル&喫茶 大島」=2018年9月(古賀賢治さん撮影)
サラリーマンらの人気店だった「グリル&喫茶 大島」=2018年9月(古賀賢治さん撮影)
にぎわっていた店内。左が岡田弘子さん=2010年9月
にぎわっていた店内。左が岡田弘子さん=2010年9月
日替わりの「大島ランチ」。ハンバーグやフライのほか、小鉢も付いてボリューム満点=2018年9月(古賀賢治さん撮影)
日替わりの「大島ランチ」。ハンバーグやフライのほか、小鉢も付いてボリューム満点=2018年9月(古賀賢治さん撮影)
 半世紀近くにわたってサラリーマンや学生らの胃袋を満たし、名物店として愛されてきた倉敷市内の洋食店が、昨年末にのれんを下ろした。「グリル&喫茶 大島」(同市大島)。長年、店主夫妻が二人三脚で切り盛りしてきたが、体調面から厨房(ちゅうぼう)に立つことが難しくなり、やむなく閉店を決意した。

 「80歳までは頑張ると言ってたんだけど…」

 岡田弘子さん(76)=同市=は、夫の松太郎さん(77)と営んでいた店を急きょ畳まざるをえなくなったことを、残念そうに話した。

 昨年12月、松太郎さんが手術のため入院。2週間ほど休業して店を再開させる予定だったが、退院後に重い物を持つのがしんどくなった。店の味を支えるソースを作るずんどう鍋を抱えることができない。夫婦で相談し、苦渋の決断をした。

 大阪、神戸の飲食店で働いていた松太郎さんは、弘子さんと結婚後の1972年に店をオープン。20席の小さなスペースながら、トンカツ、しょうが焼きなど家庭的な味を安く、ボリューム満点で提供して客を引きつけた。とりわけ人気が高かったのが「大島ランチ」。日替わりで数種類の定食を用意し、時間帯に関係なく注文に応じた。

 20代の頃初めて訪れ、この10年間も月1回程度通っていた会社員古賀賢治さん(45)は「昼食の定番店の一つ。店の方が優しく、居心地が良かった。急な閉店で驚いているし、寂しい」と惜しむ。

 近くの事業所から30人前の出前注文を受け、その場に出向いて盛り付けたこと。長年の常連だったタクシー運転手が施設に入所後も、細った体で来店してくれたこと…。46年間の思い出は尽きない。12月に店を開けたのは、松太郎さんが入院する前のわずか1日。それだけに、客に感謝の気持ちを伝えられないままなのが弘子さんの心残りだ。

 客も同じ心境なのだろう。店頭に掲示されていた閉店を告げる張り紙には「子どもの頃からトンカツ定食が大好物でした。長い間ごちそうさまでした」とのメッセージが書き込まれていた。

 「続けていたら決心がつかないし、潮時と思わないといけないのかな。お客さんには『ありがとう』の言葉しかない」。少し寂しげな表情で、弘子さんは笑った。

(2019年02月13日 08時06分 更新)

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