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出国税スタート 使途へ厳しい目が必要だ

 日本からの出国者に1人千円を課す国際観光旅客税(出国税)の徴収がスタートした。恒久的に徴収する国税の新設は「地価税」以来27年ぶりだが、無駄遣いの温床となることを懸念する声も多い。有効に活用されるか厳しく目を光らせる必要があろう。

 新税は観光振興を目的とする特定財源で、訪日外国人客を増やす環境整備に充てられる。2歳未満の子や24時間以内に出国する乗り継ぎ客を除き、国籍とか出国の目的などを問わず飛行機や船の運賃に上乗せされる。2019年度予算案では500億円の税収を見込んでいる。

 安倍政権は観光を成長戦略の柱、地方創生の切り札と位置付けて力を入れている。18年の年間訪日客数は3千万人を超えた。政府は東京五輪・パラリンピックが開かれる20年には4千万人に増やす目標を打ち出している。

 「観光立国」にふさわしい環境を整え、日本経済の活性化につなげようという方向性は理解でき、そのための一定の財源は必要だろう。取りやすいところから取ったと思われないよう、国民の理解が得られるものにしなければならない。

 何よりも気になるのが税収の使い道である。政府は(1)快適な旅行環境の整備(2)日本の魅力発信(3)旅行者の満足度向上―の3分野を定めた。具体的な施策は毎年度の予算編成で決まる。

 19年度予算案では、環境整備の分野で顔認証技術で自動化したゲートを新千歳や成田、羽田など計7空港に新増設し、出入国審査の迅速化を図る。魅力発信の分野では、海外での訪日プロモーションなどに取り組む。

 満足度向上の分野は主に地方を対象とし、文化財や国立公園を生かした観光資源づくりを進める。このほか、21年度までの3年間で全国約100カ所の観光地を公募。公衆無線LANや多言語翻訳機などを整備し、訪日客がまち歩きを不便なく楽しめるように支援するという。

 都市部から地方へ、有名観光地だけでなくそれ以外の地へと訪日客を誘導することは地方創生の弾みとなろう。観光に寄せる各自治体の期待は大きい。それに沿う中身のある施策が求められる。

 特定財源は、税収を使い切ろうとして無駄遣いなど非効率的な予算化を招きやすい。「観光振興」や地域の観光資源を整備することなどを名目に、不要なハコモノや関係の薄い事業などに予算がばらまかれる恐れがある。

 政府は「外部有識者を交えた事業点検などで無駄遣いを防ぐ」とする。だが、使途の3分野が抽象的で、どこまで精査できるかは定かでない。

 貴重な税金を投じる以上、効果的で透明性の高い運用が大前提だ。新税の導入による観光への影響や費用対効果の検証も含め、国会審議などを通じてしっかりチェックしてもらいたい。

(2019年01月11日 23時00分 更新)

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