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国宝「山鳥毛」里帰りなるか 瀬戸内市、 調達目標額は6億円

備前長船刀剣博物館で開かれたサポーター研修会で購入意義などを話す武久市長=昨年12月22日
備前長船刀剣博物館で開かれたサポーター研修会で購入意義などを話す武久市長=昨年12月22日
 瀬戸内市は国宝の備前刀「太刀 無銘一文字(山鳥毛(さんちょうもう))」の購入を目指し、ふるさと納税による資金調達やPR活動に取り組んでいる。購入費5億円と保管施設整備費1億円の計6億円のうち、6日までに寄せられたのは約1億6千万円。最終期限の3月末までに目標額を集め、名刀の「里帰り」を実現させられるか。現状を探った。

 「一人一人の力が目標達成につながる。友人知人にぜひ声を掛けてほしい」

 昨年12月22日。備前長船刀剣博物館(瀬戸内市)であった応援サポーター研修会で、武久顕也市長が熱く語った。

 サポーターは山鳥毛購入を後押しするため、会員制交流サイト(SNS)などを通じて、市の取り組みをPRする役割を担う。

 市は11月から研修会を計6回開き、備前刀の基礎知識や山鳥毛購入の意義などを解説。これまでの受講者は延べ約80人に上り、その発信力に大きな期待を寄せる。

■所有なし

 瀬戸内市は平安後期から優れた刀匠を輩出し「日本刀の聖地」と称される備前長船を市域に抱える。国宝に指定されている日本刀111振りのうち、47振りが長船を中心とする備前で打たれたものだ。

 中でも山鳥毛は、備前刀の大流派・福岡一文字派が生んだ鎌倉時代中期の名刀で、上杉謙信らが愛用。現在は岡山県内の個人が所有し、昨年1月、市に5億円で売却の打診があった。

 「備前長船刀剣博物館」という全国で唯一、刀剣をテーマとする公立博物館を持ちながら、国や県指定の重要文化財を一振りも所有していない市は、文化振興や地域活性化のため、4月に購入方針を表明。矢継ぎ早に手を打ってきた。

 11月1日から「里帰りプロジェクト」を立ち上げ、企業版ふるさと納税に加え、インターネットを通じて個人から寄付を募るクラウドファンディング(CF)型ふるさと納税などによる資金調達に着手した。

 その他にも、地元企業に寄付の窓口になってもらう法人・団体サポーター制度の創設▽有識者によるプロジェクト会議の設立▽県内の文化施設を割引料金で周遊できるパスポートの発行―なども展開する。

 企業版ふるさと納税は3月末まで、個人から募るCF型は1月末まで。期限が迫る中、武久市長は「次なる“矢”も検討している。とにかく(購入を)諦めない」と力を込める。

■慎重論も

 今回の取り組みを「悲願を達成する千載一遇のチャンス」と期待する声がある一方、市内では慎重論も根強い。購入に反対する市民からは「わがまちには分不相応。他にやるべきことがたくさんある」「維持管理費を試算して示すべき」との声も聞かれる。

 こうした意見を考慮し、市は購入に公費は投入せず、全て寄付で賄うことを決め、要望があれば市長らが直接出向き、意義などを説明する出前講座を開いている。

 「文化財は地域のアイデンティティー。実利主義だけで語ることはできない」と言うのは、購入に向け市が設置した外部評価委員会の委員長を務める臼井洋輔・岡山県文化振興審議会長だ。

 「それぞれの土地に息づく文化の多様性は、わが国の独創性を生み出す力にもなってきた。今回のプロジェクトを通じ、文化財の在り方について、一人一人が考えるきっかけにしてほしい」と話す。

 ◇

 山鳥毛 山鳥の羽毛を連想させる変化に富んだ刃文が特徴。刃長79・5センチ。1952年に国宝に指定された。岡山県内の個人が所有し、97年から県立博物館(岡山市)に寄託している。上杉謙信ゆかりの新潟県上越市が2016年に購入を表明したが、金額面で折り合わず断念した。

(2019年01月08日 01時39分 更新)

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