損保ジャパン 不正黙認した責任は重い
中古車販売会社と損害保険会社の大手同士がいかに癒着し、不正行為が続いていたのか。実態を徹底的に明らかにしなければならない。
ビッグモーターによる自動車保険の保険金不正請求問題で、金融庁が同社と損害保険ジャパンへの立ち入り検査に乗り出した。ビッグモーターは事故車両の修理時に故意に車を傷つけ、保険金の過大請求を繰り返していた。損保ジャパンは、いったん停止していた車両の修理をあっせんする取引を、不正を認識していながら再開した。
保険金の不正請求は、自動車保険に対する利用者の信頼や利益をないがしろにする行為だ。不正の温床とされる癒着の構図の解明とともに、厳正な対処が求められる。
損保ジャパンへの金融庁の検査で、焦点の一つは車両修理の紹介を再開した経緯だ。
保険金の水増し請求が発覚した後の昨年6月、損保ジャパンなど大手3社は修理をあっせんする取引を停止した。だが、損保ジャパンは翌7月の役員会議で白川儀一社長が取引の再開を促し、3社の中で唯一、再開に踏み切った。
白川氏は、不正を否定したビッグモーターの自主調査は同社に都合よく改ざんされたものであると、役員会議の前に部下から報告を受けていた。にもかかわらず、関係が悪化して取引が大きく減る可能性があることを危惧し、再開を決めたという。
白川氏は今月上旬、引責辞任を表明した記者会見で「最も大切にすべき顧客に思いが至らず、軽率だった」と謝罪した。だが、不正を黙認した責任は重い。自社の利益を優先し、保険契約者の利益を軽んじる判断だったと言わざるを得ない。
金融庁の検査ではこの他、事故車両の損害度合いを査定する際、手続きを一部省いて簡素化した理由を分析。2004年以降で計40人余りに上った損保ジャパンからビッグモーターへの出向者の役割も調べる。
金融庁は損保ジャパンの親会社であるSOMPOホールディングス(HD)への立ち入り検査を視野に入れ、同HDの桜田謙悟会長兼グループ最高経営責任者(CEO)の監督責任にも焦点を当てる。桜田氏は、損保ジャパンが取引再開を決めたことを知ったのは昨年8月末と説明しており、問題の把握が2カ月近く遅れたことになる。グループとしての企業統治の問題も見極める必要がある。
損保業界を巡っては、大企業向けの損保契約で、独禁法違反のカルテルに当たる事前の価格調整が広く行われていた疑いが先ごろ明らかになった。公正取引委員会と金融庁が大手損保4社に対する調査を進めている。
カルテル疑惑と、ビッグモーターの保険金不正請求問題に共通するのは、顧客軽視の姿勢や、法令順守意識の希薄さである。損保各社の企業体質が問われている。
ビッグモーターによる自動車保険の保険金不正請求問題で、金融庁が同社と損害保険ジャパンへの立ち入り検査に乗り出した。ビッグモーターは事故車両の修理時に故意に車を傷つけ、保険金の過大請求を繰り返していた。損保ジャパンは、いったん停止していた車両の修理をあっせんする取引を、不正を認識していながら再開した。
保険金の不正請求は、自動車保険に対する利用者の信頼や利益をないがしろにする行為だ。不正の温床とされる癒着の構図の解明とともに、厳正な対処が求められる。
損保ジャパンへの金融庁の検査で、焦点の一つは車両修理の紹介を再開した経緯だ。
保険金の水増し請求が発覚した後の昨年6月、損保ジャパンなど大手3社は修理をあっせんする取引を停止した。だが、損保ジャパンは翌7月の役員会議で白川儀一社長が取引の再開を促し、3社の中で唯一、再開に踏み切った。
白川氏は、不正を否定したビッグモーターの自主調査は同社に都合よく改ざんされたものであると、役員会議の前に部下から報告を受けていた。にもかかわらず、関係が悪化して取引が大きく減る可能性があることを危惧し、再開を決めたという。
白川氏は今月上旬、引責辞任を表明した記者会見で「最も大切にすべき顧客に思いが至らず、軽率だった」と謝罪した。だが、不正を黙認した責任は重い。自社の利益を優先し、保険契約者の利益を軽んじる判断だったと言わざるを得ない。
金融庁の検査ではこの他、事故車両の損害度合いを査定する際、手続きを一部省いて簡素化した理由を分析。2004年以降で計40人余りに上った損保ジャパンからビッグモーターへの出向者の役割も調べる。
金融庁は損保ジャパンの親会社であるSOMPOホールディングス(HD)への立ち入り検査を視野に入れ、同HDの桜田謙悟会長兼グループ最高経営責任者(CEO)の監督責任にも焦点を当てる。桜田氏は、損保ジャパンが取引再開を決めたことを知ったのは昨年8月末と説明しており、問題の把握が2カ月近く遅れたことになる。グループとしての企業統治の問題も見極める必要がある。
損保業界を巡っては、大企業向けの損保契約で、独禁法違反のカルテルに当たる事前の価格調整が広く行われていた疑いが先ごろ明らかになった。公正取引委員会と金融庁が大手損保4社に対する調査を進めている。
カルテル疑惑と、ビッグモーターの保険金不正請求問題に共通するのは、顧客軽視の姿勢や、法令順守意識の希薄さである。損保各社の企業体質が問われている。
(2023年09月25日 08時00分 更新)