侵略的外来種 水際と出どころで対策を
本来の生息地でない地域から侵入し、生態系や人の暮らしを脅かす生物を「侵略的外来種」と呼ぶ。ヒアリやコカミアリなど意図せず持ち込まれる小さな昆虫は港などで水際対策が行われているが、見逃して定着を許せば大きな影響が懸念される。国際物流が拡大する中、貿易相手国にも「出どころ」の対策を働きかけていくべきだ。
倉敷市の水島港国際コンテナターミナルで今年7月、中南米原産のコカミアリが国内で初めて見つかった。強い毒を持ち、刺されると激しい痛みが生じる。この時は全て駆除したものの、今月には同ターミナルで2件目の侵入が確認された。引き続き警戒が必要である。
2017年に初確認されたヒアリへの懸念も高まっている。侵入件数は岡山県内の3件を含め、全国で100件を超えた。刺されると重大なアレルギー反応が生じ、死に至ることもある。雑食性で在来の昆虫や植物の種子を食べるほか、家畜にストレスを与えて畜産物の生産が減る恐れがある。海外では配電盤に巣を作って故障させるといった被害も出ている。
こうした昆虫は貨物を輸入する際のコンテナなどに紛れて侵入するが、輸出国には駆除する責務がない=図。日本側で到着時に実施する調査や駆除だけでは抜本的対策にならず、侵入が多いほどすり抜けるリスクが増す。ひとたび繁殖すれば、防除には膨大な費用が見込まれる。対策に国際的な協力が不可欠だろう。
4月に札幌市で開かれたG7気候・エネルギー・環境相会合では、侵略的外来種について「移動の増加に対処する国際協力の強化」が必要との認識で一致した。政府は今後、G7各国が取り組むべき行動をまとめる方針だ。輸出前にコンテナ内を消毒したり、確認を強化したりすることが想定される。G7以外の国々にも協力の枠組みを広げていきたい。
生物多様性に関する国際的な科学者組織は今月、侵略的外来種による世界の経済的損失が、少なくとも年4230億ドル(約62兆円)に上るとする報告書を発表した。1970年以降、10年ごとに4倍に増えており、農作物が食い荒らされるといった被害が出ている。
該当する外来種は世界に3500種以上ある。絶滅した動植物の約6割に関与したとされ、生態系にも取り返しのつかない影響を与えている。そうした危機感を各国が共有することが重要だ。
倉敷市の水島港国際コンテナターミナルで今年7月、中南米原産のコカミアリが国内で初めて見つかった。強い毒を持ち、刺されると激しい痛みが生じる。この時は全て駆除したものの、今月には同ターミナルで2件目の侵入が確認された。引き続き警戒が必要である。
2017年に初確認されたヒアリへの懸念も高まっている。侵入件数は岡山県内の3件を含め、全国で100件を超えた。刺されると重大なアレルギー反応が生じ、死に至ることもある。雑食性で在来の昆虫や植物の種子を食べるほか、家畜にストレスを与えて畜産物の生産が減る恐れがある。海外では配電盤に巣を作って故障させるといった被害も出ている。
こうした昆虫は貨物を輸入する際のコンテナなどに紛れて侵入するが、輸出国には駆除する責務がない=図。日本側で到着時に実施する調査や駆除だけでは抜本的対策にならず、侵入が多いほどすり抜けるリスクが増す。ひとたび繁殖すれば、防除には膨大な費用が見込まれる。対策に国際的な協力が不可欠だろう。
4月に札幌市で開かれたG7気候・エネルギー・環境相会合では、侵略的外来種について「移動の増加に対処する国際協力の強化」が必要との認識で一致した。政府は今後、G7各国が取り組むべき行動をまとめる方針だ。輸出前にコンテナ内を消毒したり、確認を強化したりすることが想定される。G7以外の国々にも協力の枠組みを広げていきたい。
生物多様性に関する国際的な科学者組織は今月、侵略的外来種による世界の経済的損失が、少なくとも年4230億ドル(約62兆円)に上るとする報告書を発表した。1970年以降、10年ごとに4倍に増えており、農作物が食い荒らされるといった被害が出ている。
該当する外来種は世界に3500種以上ある。絶滅した動植物の約6割に関与したとされ、生態系にも取り返しのつかない影響を与えている。そうした危機感を各国が共有することが重要だ。
(2023年09月20日 08時00分 更新)