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「頑丈な壁」対立の深刻化に危機 村上春樹さん講演が文芸誌掲載

 米ウェルズリー大で講演する村上春樹さん(中央)=4月((C)Wellesley College)
 米ウェルズリー大で講演する村上春樹さん(中央)=4月((C)Wellesley College)
 作家の村上春樹さんが4月に米国の大学で行った講演「疫病と戦争の時代に小説を書くこと」の原稿が、7日発売の文芸誌「新潮」に掲載された。ウクライナ侵攻などの国際情勢を踏まえ「我々のまわりには頑丈な壁が築かれつつあります」と語り、国家間やブロック間の対立が深刻化する現状に危機感を示した。

 講演は4月27日、特別客員教授として招かれた米ウェルズリー大で行われた。村上さんは、その「壁」を巡り「安全と現状維持を求めて壁の中に閉じこもるか、あるいはリスクを承知の上で壁の外に出て、より自由な価値観を求めるか」の選択を各自が迫られていると述べた。

 4月刊行の長編小説「街とその不確かな壁」の内容にも触れ「主人公は壁に囲まれた静かな街の中にいるべきか、壁の外に出て現実の世界に立ち戻るべきか、決断に悩みます」と説明した。

 新型コロナウイルス禍で日常が制限され、人間同士のコミュニケーションの質が変化したことに言及。「僕らの精神はおそらく(中略)何らかの損傷を負ったはず」で「それは癒やされる必要がある」と語った。

(2023年06月07日 10時59分 更新)

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