山陽新聞デジタル|さんデジ

未確認石室か 造山古墳に空洞確認 岡山大など 後円部を素粒子で調査

最先端の科学調査で石室と思われる空間が内部に確認された造山古墳の後円部
最先端の科学調査で石室と思われる空間が内部に確認された造山古墳の後円部
造山古墳のミューオン調査結果などが報告されたシンポジウム
造山古墳のミューオン調査結果などが報告されたシンポジウム
 全国第4位の規模を誇る前方後円墳・造山古墳(岡山市北区新庄下、国史跡)の内部構造を最先端の科学技術で調査している岡山大などの4研究チームは4日、同大でシンポジウムを開き、未確認だった石室と推測される内部空間が後円部で確認されたと発表した。

 関西大や東京大でつくるチームは2021年から物質を透過する素粒子「ミューオン」を活用し、レントゲン写真のように内部の“透視”を進め、後円部の地表面から約1・5~2メートル以上の深さに土とは密度が異なる“空洞”を捉えたと報告した。元関西大客員教授で調査を主導した角谷賢二・国際美術研究所長は「石室が存在している期待が示された」と説明した。

 岡山大と山梨大などが同年から後円部で行ったミューオン調査でも地中約1メートルに空洞らしき反応を検出した。昨年2月に東海大が実施した電波照射による地中レーダー探査では、後円部の地表面から約80センチの下部に構造物の影を確認。昨秋、岡山市教委が発掘調査で確認した石室の部材らしき板石とも合致した。

 一方で、各チームからは「ミューオン調査の反応はノイズの可能性もあり、石室と断定するには、さらなる観測が必要」、「レーダー探査では出土した板石より下には構造物の反応がなく、石室の床面だけが残されている可能性がある」などの意見もあった。

 後円部では、羽柴秀吉の備中高松城水攻め(1582年)の際に、敵対する毛利側が陣城を築いたとされており、石室が損なわれた可能性も指摘されている。清家章・岡山大教授は「研究は着実に進んでいる。石室の謎が解明されれば、被葬者とされる吉備の王の人物像やヤマト政権との関係などが明らかになる。各チームの成果を合わせ、実像に迫っていきたい」と話した。

(2023年06月04日 21時05分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ