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脳梗塞新薬の試験、苦境に 費用高騰、国内導入遅れも

 新薬臨床試験の事務局長を務める井上学・国立循環器病研究センター脳卒中集中治療科特任部長
 新薬臨床試験の事務局長を務める井上学・国立循環器病研究センター脳卒中集中治療科特任部長
 全国14施設で進む脳梗塞治療用新薬の臨床試験が、ウクライナ危機や円安の影響で薬剤輸入費が5倍余りに高騰したため、継続が危ぶまれる事態に陥っていることが29日、分かった。寄付を募り、不足薬剤を一部買い足すめどが立ったものの、必要額には程遠い。

 脳の血管に血の塊(血栓)が詰まる脳梗塞は、発症後早期の血流再開が重要で、治療にはアルテプラーゼという血栓溶解薬が使われている。

 これを改良した新薬テネクテプラーゼが2020年ごろから欧米で使われ始めたが、日本への導入に動く製薬会社はなかった。

 そこで国立循環器病研究センターなど14施設の医師らは、4年間の計画で臨床試験を開始。国から年約3900万円の研究費を得て、脳梗塞患者110人を新薬で治療し、従来薬を投与する同数の患者と効果などを比べる予定だった。

 ところが、もともと需要が増え品薄だった新薬は、ロシアのウクライナ侵攻の影響で輸送費が高騰。円安も災いし、20年に1瓶(1人分)約30万円だった薬剤輸入費が、今年は5倍以上に跳ね上がった。

(2023年05月29日 06時16分 更新)

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