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「飛燕」実物大レプリカ完成間近 倉敷の企業、実機落札を機に製作

製作が進む「飛燕」のレプリカ(提供写真)
製作が進む「飛燕」のレプリカ(提供写真)
落札した機体と武社長
落札した機体と武社長
 倉敷市広江にあるオートバイ部品の製造販売会社が、旧日本陸軍の戦闘機「飛燕(ひえん)」の実物大レプリカ作りに取り組んでいる。社長の武浩さんが約6年前、ネットオークションで実際の機体を落札したのがきっかけ。多くの関係者から感謝の言葉が寄せられたのを力に、今夏の完成を目指し作業を進める。

 武さんは、川崎重工業(神戸市)製のオートバイのレストア(復元)などを手がける「ドレミコレクション」を経営する。飛燕は川崎重工業のルーツとなる川崎航空機工業が開発しており、オーストラリアのコレクターがオークションへ出品したのを知り2017年に1500万円で落札。七十数年ぶりの帰国となった。

 当時大きく報道され、飛燕の製造に携わった人らが県内外から訪れた。「私たちの青春」「よく取り戻してくれた」と声をかけられ、胸を打たれたという。本業の技術を生かし、当初は機体の復元を構想したが「時間がかかりすぎる」と、レプリカ作りに方針を変えた。

 看板製作などを手がけ、飛行機のレプリカも複数機作ってきた「日本立体」(茨城県小美玉市)に依頼。本体はほぼ組み上がり、今後は塗装などを施して完成させる。

 日本立体の斉藤裕行社長は「この頃の技術の上に今の豊かな生活がある。産業遺産として見てほしい」と力を込める。

 報道を見て寄せられた整備兵の日誌を読むと、岡山県出身の中尉が乗っていた可能性が出てきたという。武さんは「運命かな、とも感じる。再現して、関係する皆さんにもっと元気になってもらえれば」と話す。

 飛燕 正式名称は「三式戦闘機」で、1943年に採用された。かかみがはら航空宇宙科学博物館(岐阜県各務原市)によると、完全な形で現存しているのは日本航空協会(東京)が所有し同館で展示している1機のみ。当時の日本では数少ない液冷エンジンを搭載し、スマートなデザインが特徴という。

(2023年05月28日 16時15分 更新)

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