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メキシコに里海推進組織発足へ 岡山発の技術で生態系再生目指す

貝殻を詰めた人工魚礁を海に沈める漁業者ら。岡山発の技術で漁獲量の回復を目指す=11日、ラパス市近海
貝殻を詰めた人工魚礁を海に沈める漁業者ら。岡山発の技術で漁獲量の回復を目指す=11日、ラパス市近海
メキシコに里海推進組織発足へ 岡山発の技術で生態系再生目指す
 人の手を加えて海洋環境の改善を図る「里海づくり」の推進組織が22日、メキシコ西部のカリフォルニア湾に面したラパス市で発足する。備前市日生町地区などで里海づくりに長年取り組んできたNPO法人・里海づくり研究会議(岡山市)がアドバイザーとなり、貝殻を使った人工魚礁の設置など岡山発の技術を用いて、同湾の生態系の再生を目指す。同様の試みは中南米では初めてという。

 国際協力機構(JICA)による途上国支援の一環。「Satoumi(さとうみ)協議会」の名称で、現地の政府関係者や漁業者、環境保護団体など官民のメンバー10人が名を連ねる。魚礁を設計・製造する海洋建設(倉敷市大畠)も協力し、5月には、網かごに貝殻を詰めた魚礁(1辺75センチの立方体型)をラパス市近くの海底に200基沈めた。貝殻の隙間に魚の餌となるゴカイやカニをすみつかせ、漁獲量の回復を狙う。

 住民向けの海洋教育も予定しており、廃プラスチックを含む海ごみの回収イベントや、人工魚礁に集まる魚を鑑賞できるダイビングツアーを検討していく。

 JICAによると、ラパス市がある州では、乱獲や気候変動の影響で約900種類いる魚類の1割ほどが絶滅の危機にひんしている。イワシやブリの水揚げは2008~14年の6年間で27%も減少し、漁業だけで生計を立てられない漁業者が増えている。

 同市から相談を受けたJICAが仲介役となり、海草・アマモの再生など里海づくりで実績のある研究会議や、海洋建設の協力を取り付けた。現地で廃棄物となっている貝殻を人工魚礁の部材として再利用する狙いもある。

 協議会メンバーで海洋生物学者のマルコ・アントニオ・メディナ・ロペスさん(52)は「メキシコでは失われつつある人と海のつながりを取り戻したい」と言い、研究会議の田中丈裕事務局長は「岡山発の里海づくりのノウハウを一体的に海外に伝える初の試み。中南米で里海づくりの中心地となるよう支援したい」と話している。

(2023年05月20日 21時38分 更新)

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