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無職なら飲食無料 岡山で「酒場」 愛知の東さん企画、心境語り合う

東さん(左奥)が企画した「無職酒場」で歓談する客たち=2日、岡山市
東さん(左奥)が企画した「無職酒場」で歓談する客たち=2日、岡山市
 店に入る際、仕事の有無を聞かれ「無職」と答えた客に歓声や拍手が送られた。「飲食代タダですよ。何飲まれますか?」

 現在仕事に就いていない人は飲み食い無料―。そんなユニークなイベントが今月上旬、岡山市内の飲食店で開かれた。その名も「無職酒場」。まちづくりなどに取り組む東信史さん(38)=愛知県岡崎市=が企画し、店主を務めた。

 離職期間は否定的に捉えられがちだが、自分を見つめ直す良い機会では、との考えがあった東さん。当事者の話を聞いてみたいと思ったのが開催のきっかけだ。欧米では学び直しやスキルアップのために無職の時期を前向きに過ごす文化が根付いていることを知り、日本でも広めようと2022年6月から月1回程度、京都や大阪で開いている。

 初となる岡山ではスムージー店を間借りし、2日に酒場を開店した。約15人が訪れ、うち無職は3人。ビールや東さんが用意したつまみを味わいながら“主役”を囲み、前職をはじめ、離職や休学の理由、目標についてほぼ初対面の男女が語り合った。

 「大学で専攻した分野の関心が薄れた。時間をたっぷり使って自分と向き合い、起業の夢を具体的にしたい」と語ったのは県立大を休学中の男性(19)。結婚、出産を機に仕事を辞めた女性(31)=岡山市=は主婦の肩書に肩身が狭くなることがあるという。「普段は子どもの話題が中心。自分の話だけをできるのは新鮮で良かった。夢を持って無職になった人がいると知り視野が広がる」と笑顔だった。

 東さんは「無職は悪いことだと思い、不安や悩みを言い出せない人が大勢いるはず。気軽に立ち寄れ、胸の内を明かせる場をつくっていきたい」と話し、岡山での次回開催を検討している。

(2023年05月20日 18時24分 更新)

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