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菩薩像描かれた「鏡像」と判明 高尾北ヤシキ遺跡出土の青銅鏡

高尾北ヤシキ遺跡から出土した「鏡像」(菩薩像部分は白線で強調)=岡山県古代吉備文化財センター提供
高尾北ヤシキ遺跡から出土した「鏡像」(菩薩像部分は白線で強調)=岡山県古代吉備文化財センター提供
 岡山県古代吉備文化財センターは、高尾北ヤシキ遺跡(津山市高尾)の集落跡から2021年度に出土した青銅鏡を分析した結果、菩薩(ぼさつ)像が描かれた「鏡像」と判明したと25日発表した。平安後期~鎌倉初期に信仰のため作られた品で、当時の「神仏習合」思想の広がりが確認できるという。

 遺跡は津山市南西部の丘陵斜面に広がり、主に鎌倉~室町時代の掘っ立て柱建物跡が出土している。鏡像は室町前期(14世紀後半)の整地された地面に、仏像の描かれた面を下向けにして丁寧に埋められていた。

 直径11・8センチ、厚さ0・2センチの円盤状で、保存処理のため土やさびを落としたところ、極細の線で菩薩の坐像が刻まれていた。宝冠や胸飾り、右手で剣を立てて持つ姿などから、知恵を象徴する文殊(もんじゅ)菩薩や虚空(こくう)蔵菩薩の可能性があるという。大きさなどから、12世紀末ごろの製作とみられる。

 鏡像は、神道の象徴ともいえる鏡に、線刻や墨書で仏像などを表したもので、平安期以降に神仏習合の思想に基づいて作られた。県内では新見、高梁市の2遺跡でも出土しているほか、寺社に伝わる品も多い。

 今回の鏡像は150年ほど用いられた後、何らかの理由で埋められたとみられる。同センターは「遺跡に寺社があった形跡はなく、住民が持っていたものだろう。美作地域の信仰の歴史を考える上で貴重な資料」としている。

 鏡像は27日~5月9日、同センター(岡山市北区西花尻)で初公開される。観覧無料。

(2023年04月25日 10時30分 更新)

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