こども家庭庁発足 政策強化へ欠かせぬ財源
少子化対策や子育て支援策の司令塔として「こども家庭庁」がきょう、発足した。
厚生労働省や内閣府に分散していた関連部局を集約して一元的に対応する首相直属組織で、目下の最大テーマとなっている少子化対策を強力に推進。児童虐待や貧困など子どもに関する課題に対して年齢や制度の壁を超え、切れ目のない支援を目指す。縦割り行政の弊害を排除するため、2021年に当時の菅義偉首相が打ち出していた。
懸念されるのは文部科学省の反対で、今回は幼稚園や小中学校といった教育分野の移管が見送られたことだ。いじめや不登校対策はこども家庭庁と文科省が連携して対応する。こども家庭庁の担当閣僚には他省庁の政策が不十分な場合に是正を求める「勧告権」も与えられた。これらを生かし、司令塔の役割が果たせるかを注視したい。
政府は1990年代から子育て支援策の充実に取り組んできたが、少子化の進行は止まるどころか加速し、2022年の出生数は初めて80万人を割り込んだ。児童虐待の相談や不登校件数も過去最多となるなど、子どもを取り巻く状況は深刻だ。
こども家庭庁の発足と同じ日に施行された「こども基本法」の意義も大きい。日本には「児童福祉法」「母子保健法」「教育基本法」など、子どもに関するさまざまな法律があるものの、子どもを「権利の主体」として明確に位置づけ、その権利を保障するための基本法が欠けていた。
日本も批准する国際条約「子どもの権利条約」を踏まえ、基本法には子どもの基本的人権の保障や子どもの意見尊重、子どもの最善の利益の優先といった基本的な理念が定められた。
子どもは大人の指示や決まりに黙って従えばよいという考え方が大人の側にあるとすれば、その認識や慣習を変えていかねばならない。子ども自身に意見を表明する権利があることを社会の共通認識とし、子どもたちにも伝えていく必要がある。
子ども政策を強力に進めるための新組織と基本法という「器」はできた。問題は中身となる施策である。
政府はきのう、少子化対策のたたき台となる試案を公表した。児童手当の所得制限の撤廃や多子世帯への加算、子育て家庭が親の就労状況を問わずに保育所を利用できる制度の検討などを列挙した。ただ、財源の裏付けや実施時期は未定だ。財源が確保されなければ、岸田文雄首相が言う「次元の異なる少子化対策」は掛け声倒れとなる。
今後、10年間程度が出生数減少にブレーキをかける最後のチャンスと指摘されている。年間出生数が120万人前後と比較的多かった1990年代生まれの世代が結婚や出産の適齢期を迎えるためだ。首相はスピード感を持って、財源確保に向けた議論を主導しなければならない。
厚生労働省や内閣府に分散していた関連部局を集約して一元的に対応する首相直属組織で、目下の最大テーマとなっている少子化対策を強力に推進。児童虐待や貧困など子どもに関する課題に対して年齢や制度の壁を超え、切れ目のない支援を目指す。縦割り行政の弊害を排除するため、2021年に当時の菅義偉首相が打ち出していた。
懸念されるのは文部科学省の反対で、今回は幼稚園や小中学校といった教育分野の移管が見送られたことだ。いじめや不登校対策はこども家庭庁と文科省が連携して対応する。こども家庭庁の担当閣僚には他省庁の政策が不十分な場合に是正を求める「勧告権」も与えられた。これらを生かし、司令塔の役割が果たせるかを注視したい。
政府は1990年代から子育て支援策の充実に取り組んできたが、少子化の進行は止まるどころか加速し、2022年の出生数は初めて80万人を割り込んだ。児童虐待の相談や不登校件数も過去最多となるなど、子どもを取り巻く状況は深刻だ。
こども家庭庁の発足と同じ日に施行された「こども基本法」の意義も大きい。日本には「児童福祉法」「母子保健法」「教育基本法」など、子どもに関するさまざまな法律があるものの、子どもを「権利の主体」として明確に位置づけ、その権利を保障するための基本法が欠けていた。
日本も批准する国際条約「子どもの権利条約」を踏まえ、基本法には子どもの基本的人権の保障や子どもの意見尊重、子どもの最善の利益の優先といった基本的な理念が定められた。
子どもは大人の指示や決まりに黙って従えばよいという考え方が大人の側にあるとすれば、その認識や慣習を変えていかねばならない。子ども自身に意見を表明する権利があることを社会の共通認識とし、子どもたちにも伝えていく必要がある。
子ども政策を強力に進めるための新組織と基本法という「器」はできた。問題は中身となる施策である。
政府はきのう、少子化対策のたたき台となる試案を公表した。児童手当の所得制限の撤廃や多子世帯への加算、子育て家庭が親の就労状況を問わずに保育所を利用できる制度の検討などを列挙した。ただ、財源の裏付けや実施時期は未定だ。財源が確保されなければ、岸田文雄首相が言う「次元の異なる少子化対策」は掛け声倒れとなる。
今後、10年間程度が出生数減少にブレーキをかける最後のチャンスと指摘されている。年間出生数が120万人前後と比較的多かった1990年代生まれの世代が結婚や出産の適齢期を迎えるためだ。首相はスピード感を持って、財源確保に向けた議論を主導しなければならない。
(2023年04月01日 08時00分 更新)