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災害備蓄の食料 廃棄を避けるため連携を

賞味期限が迫った災害備蓄用の水を配布する清音小児童
賞味期限が迫った災害備蓄用の水を配布する清音小児童
 総社市立清音小の4年生60人が先日、災害備蓄用の賞味期限が迫ったペットボトル入りの水約300本を市内で配り、市民にフードロス削減を呼びかけた。

 児童らは3学期、廃棄予定の食材を缶詰にしている一般社団法人コノヒトカン(倉敷市)の三好千尋代表理事を講師にフードロス問題などを学ぶ中で、備蓄用の水が大量に残っている問題を知り、廃棄を回避するために協力した。

 水は、大阪の商社が保有していた9500本の一部だ。寄付された食料を生活困窮者らへ贈る活動をしているNPO法人フードバンク岡山(岡山市)は、廃棄を回避するために仲介し、中国学園大、岡山県立大、岡山高に託した。

 岡山高の生徒は受け取った約4300本を校内や近くの公民館の講座生らに配るなどした。うち約2千本をコノヒトカンが譲り受けて配布。その一部を清音小児童が請け負った形だ。岡山県内の諸団体のバトンリレーで、廃棄せずに済んだと言えよう。

 今、保管期限が近づいた災害備蓄用の食料の廃棄回避が課題として浮上している。フードバンク岡山などには企業や行政から寄付の申し出があるが、一度に大量の品が来るため、運搬の労力や引き取り手の確保に苦慮している。

 自治体は防災訓練などの際に参加者に配るなどしているが、新型コロナウイルス禍のために訓練が無くなって配布できず、その分がフードバンクなどに回った側面もある。

 問題は今後、さらに大きくなる可能性が高い。行政は、想定される避難者が3日間すごせる量の食料を備蓄し、県が3分の1、市町村が3分の2を担うのが原則だ。ハザードマップの変更で浸水想定域が広がれば、想定する避難者が増えて備蓄量も増加していく。岡山市は「避難者想定の約12万人分まで今後も備蓄量を増やしていく」とし、倉敷市も「大きな倉庫ができて量が増えている」という。

 一度に大量の期限を迎えないよう、使った分だけ足していく「ローリングストック」をしているケースもあるが、もともとの量が多く容易には問題解決にならない。

 企業には「備蓄食料の寄付により困窮者らに役立っている」とアピールしているケースもあるが、寄付後に問題があることも知り、フードバンクなどとの事前の調整を図ってほしい。前述の水の事例のように、地域が連携して対応していくネットワークづくりも必要だろう。

(2023年03月30日 08時00分 更新)

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