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90歳で大学卒業「やり遂げた」 岡山の藤原さん 70年越し夢実現

日本福祉大の学位記を手にする藤原さん
日本福祉大の学位記を手にする藤原さん
学位記授与式のため日本福祉大を訪れた藤原さん(藤原さん提供)
学位記授与式のため日本福祉大を訪れた藤原さん(藤原さん提供)
 岡山市中区の藤原辰雄さん(90)が今月、日本福祉大(愛知県美浜町)福祉経営学部の通信教育課程を卒業した。家庭の事情で一度は諦めた大学進学の夢を、実に70年越しで実現。「やり遂げた充実感でいっぱい」と感慨深げに語る。

 井原市美星町に6人きょうだいの三男として生まれたが、10代の時に両親が相次ぎ他界。岡山市の夜間高校に通い、昼間は建設業の仕事で生計を立てた。大学進学は、受験勉強が十分できず諦めざるを得なかったという。

 高校卒業後は岡山市の福祉事務所に就職。生活困窮者支援を中心に約40年携わった後、さらに30年近く社会福祉施設で働いた。

 転機は、病気療養のため施設を退職した83歳の時。娘が図書館から借りてきてくれた小説やエッセーなど100冊余りの本を読破するうち「『大学に行きたい』という夢が再び膨らんだ。挑戦するなら今しかないと思った」。

 福祉を理論的に学んでみようと同大の医療・福祉マネジメント学科に入学。以後4年間、自宅のパソコンをインターネットにつないで講義の動画を視聴し毎日3時間ほど勉強した。「専門用語を覚えるのが一苦労だった」が、動画を繰り返し再生して頭にたたき込んだ。

 社会福祉士、精神保健福祉士の国家試験の受験にそれぞれ必要な単位も、現場実習を除いて取得した。

 18日の学位記授与式で初めて学びやを訪れ「母校ができた」との実感が湧いたという。「次は、得た経験と知識を生かし、人の役に立ってみたい」。卒寿を迎えてもなお、新たな意欲を見せている。

(2023年03月29日 18時07分 更新)

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