東証市場再編1年 企業変革促し取引活発に
東京証券取引所が市場区分を再編して間もなく1年になる。上場基準を厳しくすることで取引の活性化を狙ったが、これまでのところ株価は大きく上がっていない。国内外から投資を呼び込むには、上場各社が一層の成長を目指すよう東証が変革を促し、市場の魅力を高めていくことが求められる。
再編前の1部、2部、マザーズ、ジャスダックの4市場は違いが曖昧な上、上場廃止基準が緩く、企業価値を高める動機付けが不十分と指摘されていた。新区分はプライム、スタンダード、グロースの3市場。プライムは株式時価総額100億円以上といった基準を設け、厳選市場と位置付けた。だが、基準に届かない企業を救済する経過措置を用意したため、旧1部の8割以上の企業がプライムに残り「違いが分からない」との批判が出ていた。プライムの株価指数は再編前とほとんど変わっていない。
東証は1月に、経過措置を2025年3月以降順次終了する方針を決めた。基準を満たせない企業は26年9月末にも上場廃止となるため、時価総額を高めるといった経営改善を急ぐことになる。市場の魅力向上につながるだろう。
東証は合わせて、株価純資産倍率(PBR)が継続的に1倍を割り込んでいる企業に、対策を開示するよう求めていくことも決めた。1倍割れは、企業が解散し資産を売却して得られる金額より、株式の時価総額が下回っていることを示す。稼ぐ力への評価の低さの表れである。日本企業は欧米に比べて1倍割れが多いと指摘されている。
東証の方針を受け、シチズン時計や大日本印刷が、PBRの上昇につながる大規模な自社株買いを発表した。他の1倍割れ企業も株価上昇への対応を取ると期待が膨らんでおり、市場は東証の対策を歓迎していると言える。
政府は24年から、少額投資非課税制度(NISA)を拡充し、生涯の投資上限を800万円から1800万円に引き上げることにしている。昨年策定した「資産所得倍増プラン」では、NISAによる投資額を5年間で56兆円へと倍増させる目標を掲げており、家計の金融資産を貯蓄から投資に移行させる方針だ。
だが、現在はNISAを活用した投資の相当程度が海外に流れているとみられる。多額の金融資産が国内企業の成長投資にあまり用いられず、海外企業に振り向けられているのは問題だろう。
東証の株式売買額は、米ニューヨークや中国・上海に大きく水をあけられ、世界での存在感が薄れている。日本経済の長期低迷を打破するためにも、東京の市場に資金が集まるよう流れを変えることが求められる。上場企業は積極的な設備投資などで企業価値の向上に努めてもらいたい。東証はこうした企業努力を促す仕組みをつくっていく必要がある。
再編前の1部、2部、マザーズ、ジャスダックの4市場は違いが曖昧な上、上場廃止基準が緩く、企業価値を高める動機付けが不十分と指摘されていた。新区分はプライム、スタンダード、グロースの3市場。プライムは株式時価総額100億円以上といった基準を設け、厳選市場と位置付けた。だが、基準に届かない企業を救済する経過措置を用意したため、旧1部の8割以上の企業がプライムに残り「違いが分からない」との批判が出ていた。プライムの株価指数は再編前とほとんど変わっていない。
東証は1月に、経過措置を2025年3月以降順次終了する方針を決めた。基準を満たせない企業は26年9月末にも上場廃止となるため、時価総額を高めるといった経営改善を急ぐことになる。市場の魅力向上につながるだろう。
東証は合わせて、株価純資産倍率(PBR)が継続的に1倍を割り込んでいる企業に、対策を開示するよう求めていくことも決めた。1倍割れは、企業が解散し資産を売却して得られる金額より、株式の時価総額が下回っていることを示す。稼ぐ力への評価の低さの表れである。日本企業は欧米に比べて1倍割れが多いと指摘されている。
東証の方針を受け、シチズン時計や大日本印刷が、PBRの上昇につながる大規模な自社株買いを発表した。他の1倍割れ企業も株価上昇への対応を取ると期待が膨らんでおり、市場は東証の対策を歓迎していると言える。
政府は24年から、少額投資非課税制度(NISA)を拡充し、生涯の投資上限を800万円から1800万円に引き上げることにしている。昨年策定した「資産所得倍増プラン」では、NISAによる投資額を5年間で56兆円へと倍増させる目標を掲げており、家計の金融資産を貯蓄から投資に移行させる方針だ。
だが、現在はNISAを活用した投資の相当程度が海外に流れているとみられる。多額の金融資産が国内企業の成長投資にあまり用いられず、海外企業に振り向けられているのは問題だろう。
東証の株式売買額は、米ニューヨークや中国・上海に大きく水をあけられ、世界での存在感が薄れている。日本経済の長期低迷を打破するためにも、東京の市場に資金が集まるよう流れを変えることが求められる。上場企業は積極的な設備投資などで企業価値の向上に努めてもらいたい。東証はこうした企業努力を促す仕組みをつくっていく必要がある。
(2023年03月29日 08時00分 更新)