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昆虫の死んだふり 高緯度ほど長く 岡山大院チーム 統計解析から導く

松村健太郎研究助教
松村健太郎研究助教
 昆虫が見せる外敵からの生き残り術「死んだふり」は、高緯度エリアの方が低緯度より長時間―。こんな研究を岡山大大学院の松村健太郎研究助教(行動生態学)と宮竹貴久教授(同)のチームがまとめ29日、英科学誌バイオロジーレターズに発表した。

 死んだふりは、動かない獲物には襲わない習性を逆手に取った自己防衛反応。昆虫以外に哺乳類や魚類などでも見られ、捕食回避行動として進化した。ダーウィンらの自然科学者が関心を寄せたもののメカニズムなど詳細は分かっておらず、同大大学院などの研究で徐々に明らかになってきた。

 チームは、各地に生息する害虫コクヌストモドキを全国38カ所で採集。天敵に遭った時と同じ状況になるよう、棒でつつくなどの刺激を与えた。その結果、最北の青森県は集団の9割超が死んだふりを見せ平均時間は162・97秒だった一方、最南の沖縄県(西表島)は7割前後で72・87秒となるなど、南北間で差があることを統計解析から導いた。

 緯度の違いが生物の特徴付けに影響する現象は「緯度クライン」と言われ、高緯度のため寒冷地のクマは低緯度より体が大きいことが一例に挙げられている。

 松村研究助教は「高緯度の昆虫ほど外敵の脅威がより大きい可能性がある」と推測。さらに「今回の研究結果が昆虫以外にも当てはまれば、未解明部分が多い死んだふり行動の謎に一層迫ることになるだろう」と話している。

(2023年03月29日 08時01分 更新)

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