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空き家対策 早めの活用促し増加防げ

 政府が空き家の増加抑制策を盛り込んだ特別措置法改正案を国会に提出した。空き家は今後も増加が見込まれ、状態が悪化する前に早めの活用や撤去を促すのが大切だ。自治体と連携して、増加に歯止めをかけてもらいたい。

 総務省の調査によると、空き家は2018年時点で849万戸で、20年間で1・5倍に膨らんだ。このうち、活用のめどが立たない長期不在の物件は349万戸。全住宅の5・6%を占め、岡山、広島県では8・0%、香川県は9・7%に上っている。

 看過できないのは防災や防犯、衛生、景観への悪影響が指摘されていることである。今年1月、寒波の影響により石川県で水道管の凍結、破裂が相次ぎ最大1万世帯超が一時断水した際は、空き家で漏水が多発したことが被害拡大の背景にあるとみられた。

 改正案は、管理が不十分で放置すれば倒壊の危険性が高まる物件を「管理不全空き家」とし、固定資産税の軽減対象から除外するのが柱となる。これまでは周囲に著しい悪影響を及ぼす「特定空き家」が除外対象だった。

 管理不全空き家はその前段階で、市町村は国の指針を踏まえ管理不全と判断した場合、所有者に修繕や庭木の伐採などの対策を指導、勧告する。住宅がある土地は固定資産税を軽減する優遇が受けられるものの、勧告対象の空き家がある土地は除外する。

 所有者の責務を重くみたと言えるが、負担の増加には反発もあろう。実施に当たっては対象を明確にして、十分に周知することが欠かせない。

 改正案では、空き家の利活用を進めるため、自治体が「促進区域」を設ける制度も導入する。建物の用途が住宅などに限定されているエリアでも、自治体の活用指針に沿っていれば店舗や旅館への転用を認める。住民の理解を得て進めることが求められる。

 空き家を巡っては、京都市が全国の自治体で初めて、所有者に独自の税金を課すことを目指している。売却・賃貸を促し、住宅の供給増につなげる狙いで、松本剛明総務相も創設に同意した。導入は26年以降だが、効果が出れば住宅不足に悩む他都市の参考になりそうだ。

 岡山県内の自治体も対策を強めている。例えば、高梁市は1月、市内への移住を検討している人を対象に1泊2日の「空き家バンクツアー」を初めて開催した。

 倉敷市は市内の空き家情報を登録し、広く知らせる「空き家バンク」制度を先に始めた。県宅地建物取引業協会、県不動産協会と連携し、両協会が共同運営する住宅情報サイトを活用して売却の希望価格などを発信する。

 こうしたバンクを設置しているのは昨年3月時点で全国の市町村の8割に上る。だが、自治体だけで効果的な活動は難しかろう。地域に根差したNPOや住民組織と協力して取り組むことが重要だ。

(2023年03月27日 08時00分 更新)

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