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住民参加の発掘 誇りを育む「真庭モデル」

地元住民が発掘している荒木山西塚古墳の現地説明会
地元住民が発掘している荒木山西塚古墳の現地説明会
 全国でも珍しい住民参加型の調査を「真庭モデル」として広く発信してもらいたい。真庭市と同志社大、地元住民が発掘している北房地域の荒木山西塚古墳である。山陽新聞社は地域課題の解決を図る「吉備の環(わ)アクション」でかねて活動を報じてきた。

 今月開かれた現地説明会では、地元の保存会メンバーも研究者とともに説明役を務めた。岡山県内外から訪れた考古学ファンに、出土した石列や土器を示し「想定しなかった発見があった」と語る姿は誇らしげだった=写真。

 荒木山西塚古墳は全長63メートルの前方後円墳で、古墳時代初期のものとみられている。隣には、前方後方墳で少し小さい東塚がある。

 調査に向けて動きだしたのは2016年。住民が保存会の前身を立ち上げ、市に働きかけた。古墳を覆うやぶなども取り除いた。18、19年度には同大と磁気探査装置などによる墳丘を掘らない調査にこぎ着けた。地域の貴重な史跡を埋もれさせないとの強い思いがあったからに違いない。

 それが実った今回の発掘は2年計画で、昨年11月に着手した。専門家に発掘の手法を教わった約40人の会員は作業に従事し、一般参加のボランティアに指示も出している。

 これに先立ち、同市は歴史・文化の保存活用に向け、同大の専門機関と協定を結んだ。さらに、調査を指導助言するワーキンググループのメンバーに県内外の学者を委嘱した。学術的価値を損なわないため、欠かせないことだ。

 史跡を地域の活性化に生かすことは近年、改めて注目されている。18年の文化財保護法改正では一般公開を含めて文化財の活用が重視された。住民参加の調査はその一つと言え、成果が期待される。

 先例として知られるのは岡山県美咲町の月の輪古墳だ。1953年、延べ1万人が発掘に参加し、注目された。

 遺跡は行政や研究者だけのものでなく、地域の財産でもある。住民が触れる機会をつくることは大切だろう。

 荒木山西塚古墳の発掘には地元の小中学生も加わった。今回の説明会場近くのテントに、体験学習の様子をまとめた壁新聞も展示されていた。

 「古墳を誇りに思い、もっとよく知り大切にしていきたい」―。そうした感想があった。次世代の誇りを育んだことは大きな成果である。

(2023年03月20日 08時00分 更新)

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