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CO2排出量取引 削減努力引き出す制度に

 二酸化炭素(CO2)の排出量を売買する「カーボン・クレジット市場」が東京証券取引所に設けられ、取引が始まっている。経済産業省による国内初の実証事業である。取引が活発に行われるようにして、CO2の排出削減につなげることが期待される。

 実証事業は来年1月まで実施される。取引の対象は「J―クレジット制度」に基づくクレジットと呼ばれるCO2の排出枠である。再生可能エネルギーの導入や植樹などでCO2の排出を減らした企業を国が認証し、クレジットを発行する。

 自社ではCO2を減らすのが難しく削減目標に届かない企業は、クレジットを購入すれば、排出を減らしたと見なされる。投資家や消費者に対し、環境問題に積極的に取り組んでいることをアピールできるのが利点となる。クレジットを売却する側は、環境分野への投資で収益が得られるようになり、さらに投資意欲が高まるメリットがある。

 クレジットはこれまで企業間の相対で取引されていた。経産省は専門の市場を設けて取引の流動性を高め、参加企業を増やすことで脱炭素の流れを加速させたい考えだ。

 市場は9月22日にスタートし、大企業を中心に160社以上が参加している。価格は削減の手段によって異なり、今月は再生可能エネルギーの活用で削減したクレジットがCO21トン当たり1750~2500円、省エネルギー設備の導入で削減したクレジットが1000~1500円で取引された。売買が成立しない日もあった。

 排出量取引は環境規制の厳しい欧州連合(EU)が先行している。2005年に市場が創設され、取引価格は今年に入り1トン当たり60ユーロ(約8600円)を超える水準で推移している。大規模な企業はCO2を排出できる上限が定められており、達成できない場合は他社から排出枠を購入しなければならない。上限(キャップ)を設定して取引(トレード)を進めることから、キャップ・アンド・トレード方式といわれる。

 これに対して日本は、各社に排出量の上限が割り当てられておらず、自主的に排出目標を定めることになっている。経済活動に大きな影響が及ばないよう配慮したためだ。だが、目標を甘く設定する企業が多ければ、クレジットを取引する必要性は薄れ、排出削減がなかなか進まないだろう。強制力のない日本のやり方でどれだけの成果が得られるか、事業を通じて検証してもらいたい。

 日本政府は30年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%減らし、50年までに実質ゼロにする目標を掲げている。排出量取引は市場取引を通じて企業の排出削減を促進し、社会全体としても効率的に排出を減らせるとされる。目標の実現に向け、企業努力をうまく引き出す制度設計が求められる。

(2022年11月28日 08時00分 更新)

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