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がんの緩和ケア 治療の早期から浸透図れ

 病気の痛みで最も激しいとされる一つが、がんによるものだ。かつて「がんは痛くて当たり前」という風潮もあったものの、痛みが減ると生存期間が延びるとの研究結果もあり、世界保健機関(WHO)を中心に近年、治療の早期からの緩和ケア実施が呼びかけられてきた。

 日本では、がん対策基本法に基づき国が2007年に策定したがん対策推進基本計画で、緩和ケアについて治療の初期段階から充実させ、切れ目なく実施する必要があるとされた。がん診療に携わる全ての医師が研修などで基本的な知識を習得することを目標に、緩和ケアの浸透を図ってきた。

 だが、その効果はまだ十分でないと言わざるを得ない。医療機関による取り組みの強化が求められている。

 国立がん研究センターが今年3月に公表した実態調査の結果では、がん患者の29%が亡くなる前の1週間に強い痛みを感じていた。5万4千人の遺族に対するアンケートで課題が浮き彫りになった。

 痛みの理由は「医療者は苦痛に対処してくれたが、不十分だった」(28%)が最も多かった。床擦れや腰痛など「がん以外の病気の症状による痛みがあった」「認知症で本人が意思表示できなかった」といった回答もあった。

 基本的な対応で取れない痛みや、がん以外によるもの、認知症で意思表示できないときの対応にもっと研究が必要だろう。

 痛みの除去はモルヒネなど医療用麻薬投与が基本だが、がんが神経を侵した痛みには効かないとされる。放射線治療や麻酔科医による神経ブロックも効果的とはいえ、神経ブロックができる医師の不足などが問題となっている。

 厚生労働省は6月、全国の医療機関に「がん診断時からの緩和ケアの実施」を求める文書を出した。同省の専門家部会が、医療従事者向けに診断時の緩和ケアを実践するポイントをまとめ、放射線治療や神経ブロックの活用も勧めている。

 早期から放射線や麻酔の医師と相談するなど、各分野のスタッフが連携してケアを行うのが大切だと専門医は指摘する。がんが進行した状態だと、全身状態の悪化で既に神経ブロックなどが難しいこともあるからだ。

 日本では、がんは2人に1人が一生に一度は患うとされる身近な病である。拠点病院での手術などの入院治療に加えて、近年は通院しながら抗がん剤、放射線治療を受けたり、地元の医療機関で経過を観察したりする患者も増えている。緩和ケアも地域医療全体への浸透が欠かせないと言えよう。

 痛みの情報が医師らに伝わっていないこともあるとされる。患者も我慢せずに伝えるよう心掛けるべきだろう。たとえ終末期でも痛みに苦しまず、笑顔でいられることを目指したい。

(2022年10月07日 08時00分 更新)

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