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運賃無料デー拡大 公共交通再構築の契機に

 路線バスや路面電車、鉄道が乗り放題となる「運賃無料デー」の取り組みが拡大している。岡山市が昨年始めたところ好評だった。あすから倉敷市、25日からは真庭市が加わる。今秋は週末を中心に多くの無料デーが実施される。

 岡山市は、昨年11月末の日曜日に初めて、市内発着のバスや路面電車を対象に行った。新型コロナウイルス禍で減退した公共交通の需要喚起、観光や買い物の促進による経済活性化が狙い。市民以外も利用でき、市内発着の路線で市外への遠出も可能だ。乗客は乗車時に取った整理券を降車時に回収箱に入れるだけで、運賃は市が負担する。

 初回の利用は前週の2・4倍に上り、市中心部の百貨店の入店者数や通りの人出が大きく増えた。12月の平日にも行って好評で、岡山商工会議所は今年2月、無料デーの継続的な実施を市に要望した。

 コロナ感染者の増加で一時できなかったが、7月から12月までの日曜日と祝日に計8回行うことになった。前回の8月には前週の約2倍の利用があるなど、好調が続く。普段はマイカーが主体のファミリー層も多く、新たな利用者となる効果も見込めよう。

 24日から始める倉敷市は、11月までの4回、路線バス(一部を除く)と水島臨海鉄道を対象に行う。隣接する岡山市とは実施日をずらしている。乗客が増えて臨時便を出す場合を想定し、車両や運転手を確実に確保するため、同じ日を避けたという。

 真庭市は市営のコミュニティーバス「まにわくん」の運賃無料化を、岡山市の実施日に合わせて行う。岡山市からのバスとの乗り継ぎによる観光利用の掘り起こしなどを狙い、観光地の蒜山高原にも行ける。県の南北を貫く長い行程が無料なのは魅力だろう。

 もともと熊本市や高知市で始まった取り組みだ。岡山市の成果も参考に今夏から北海道の旭川、札幌市でも進められた。世界的な潮流にもなっていて、ドイツは今夏の3カ月間、長距離を除く国内の公共交通機関をわずか月額9ユーロ(約1265円)で乗り放題とした。米国の鉄道や路線バスでも運賃を期間限定で無料にする試みが相次いでいる。

 重要なのは、取り組みを一過性に終わらせず、公共交通を再構築する契機にすることだ。移動における公共交通の分担率を上げ、街のにぎわいづくりや脱炭素、歩く距離が延びての健康増進などにつなげてこそ意義が大きい。

 岡山、倉敷市などでは財源として、国のコロナ対策の「地方創生臨時交付金」が使われている。恒久的な取り組みには、国の何らかの財政措置の継続が欠かせない。

 年初に始まったガソリン価格の抑制措置はこのままなら累計3兆円を超える。脱炭素に逆行する政策でもあり、巨費の投入を続けるのではなく、代替措置として公共交通の利用促進に充てる考え方も取り入れるべきだろう。

(2022年09月23日 08時00分 更新)

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