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図書館や市民プールは、無料か格…

 図書館や市民プールは、無料か格安料金で利用できる。もちろん運営は採算がとれない。つまり赤字経営である。それでも非難されることはない。それが鉄道やバスなどの公共交通になると一転、赤字は悪のように言われ、肩身が狭い―▼こんな対比が交通経済学者から聞かれる。図書館などは民間委託もされているが、基本は行政が行うサービスと考えられている▼日本は人口密度が高く、公共交通は比較的採算がとれていた。国鉄を民営化もし、民間が担うのが当然と考えられてきた。だが、諸外国は違う。公共サービスとして国や自治体が支えるのが世界標準である▼フランスで運賃収入によって賄われるのは運行経費の約3割にとどまるなど、5割を下回る国も多い。日本では独立採算を求められ、新型コロナウイルス禍による乗客減少を契機に減便や路線廃止が相次ぎ、交通崩壊が懸念される▼富山県が設けた地域交通戦略会議は今月、採算性にとどまらず、利用者の利便性アップなど県民の幸福度向上を重視し、最適な地域交通サービスを目指す方針を打ち出した。地域全体で実現しようと、具体的な手法や公的負担の在り方を詰めていく▼従来型の発想の大きな転換だが、考えてみれば当たり前の話である。事業者の採算確保が公共交通の目的ではない。図書館や市民プールのように。

(2022年09月20日 08時00分 更新)

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